藤井正弘の血統トピック

【安田記念】“親日派”血統の香港2頭に要注目

[ 2011年6月1日 06:00 ]

 東京競馬場のターフビジョンに映し出された珍しいスーツ姿のモハメド殿下に8万人の観衆から大きな拍手と歓声が上がった。その時ふと思ったのは、ドバイ首長であるVIPの緊急来日は、国難にひんしているこの国の競馬そのものへの応援メッセージだったのではないかということ。だとすれば、所期の目的は十分に達成されただろう。史上初めて父内国産馬だけで争われた今年のダービーはくしくも、人的な面では最も国際色豊かなダービーとして記憶されるに違いない。

 今週の安田記念には恒例の香港馬が参戦してくる。こんな時期だからこそ、対外関係の日常性が損なわれていないことを実感できるのはうれしい。血統的にもいずれ劣らぬ“親日派”だ。

 ビューティーフラッシュにとっては4番人気で11着に敗れた昨年の雪辱戦。エーシンフォワードが参戦した香港マイルでG1初制覇を飾った後、今年に入って香港ローカルG1を連勝と、6歳を迎えて一段とパワーアップしてきた。今年は安田記念に強いダンチヒ血脈(母の父フォルクスラード)の真価発揮が期待できそうだ。英2000ギニー馬である父のゴーランは、01年(6着)、02年(7着)と2年連続でジャパンCに挑んだ馬。再来日も父子2代ということになる。

 サムザップは国際グレード未勝利だが、ローカルG1では香港クラシックマイル勝ちのほか、たびたび上位入線を果たしている隠れた実力派。父のシンコウキングは97年の高松宮杯(当時)など、通算8勝を挙げた(外)の名マイラーで、種牡馬として福島民報杯勝ちのロードダルメシアンなど3世代の産駒を残した後、00年秋シーズンからシャトル供用先のニュージーランドに完全移籍した。ニュージーランドダービー馬のセラゲールなど、4頭のG1ウイナーを出す成功を収めた「輸出種牡馬」のパイオニアである。

 安田記念とは縁がなかったシンコウキングだが、オープン特別当時の富士Sなど7戦3勝、2着3回と、東京コースを稼ぎ場所にしていた。その血が“第二の故郷”に錦を飾る可能性も見込んでおきたい。(サラブレッド血統センター)

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