藤井王将 2勝でダブルピース 2月はハードな対局日程も「忙しいが充実している」

[ 2023年1月31日 05:30 ]

金沢名産のズワイガニのオブジェを背に記念撮影する藤井王将
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 藤井聡太王将(20)=竜王、王位、叡王、棋聖含む5冠=が金沢市で羽生善治九段(52)に95手で勝利した第72期ALSOK杯王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)7番勝負第3局から一夜明けた30日、同市の近江町市場を散策した。対戦成績2勝1敗とした3局全てで羽生に委ねた戦型選択。今後もこのスタイルは貫く構えで、歴代最多のタイトル獲得99期の羽生将棋から学びも得ていく。

 魚介に野菜、精肉店と、活気あふれる市場を歩いた。再び白星先行の第3局から一夜明け。街を白く染め直した雪にも「新鮮で楽しめました」と藤井は笑顔を見せた。

 戦型は一手損角換わり、相掛かり、そして雁木(がんぎ)へ進んだ。選択する側にある、事前準備を生かせるメリット。対して受けて立つ側は、持ち時間内での対応を迫られるため不利は否めない。

 それでも言う。「この形はどうでしょう?と提示されて、一局ごとに違っている。指していて楽しい将棋が続いているのかなと思う。このスタンスでやっていくつもりです」。勝利を目指すのは大前提だが、中盤のねじり合いも興味深く、「第4局以降、どういう展開になるか楽しみ」。32歳差対決は20歳の可能性を引き出している。

 王将戦では91年度の第41期、初挑戦で奪取した谷川浩司竜王が7番勝負開幕前、「全局違う戦法で戦いたい」と宣言した。南芳一王将相手に、四間飛車だった第1局こそ屈したが第2局以降矢倉、横歩取り、ひねり飛車、中飛車で4連勝した。

 戦型選択を委ねられた羽生が今後、どう出るかは不明だが、黄金対決を盛り上げる発言であることは間違いない。第3局の分岐点については55手目[先]6三馬[後]4三金[先]4一馬を挙げ、「後手王の急所がつかみづらい将棋だった。上下の挟み撃ちを目指す、攻めの形が作れた」と振り返った。

 2月は、重い意味を持つ1カ月となる。王将戦第4、5局以外に1日は名人初挑戦を懸けたA級順位戦で永瀬拓矢王座(30)と対局。6勝1敗で単独首位の藤井は3月の最終局を前に、勝てばプレーオフ以上が確定する。6冠目を目指す棋王戦も、5日開幕。渡辺明棋王(38)との5番勝負は18日にも第2局があるなど、計7局を予定する。

 昨年は王将戦をストレート奪取したため2、3月の対局が一気に減った。2月2局、3月1局。公式戦に飢えた1年前を思えば「忙しいが充実している」。タイトル戦で長野市、東京都立川市、再び金沢市、島根県大田市を巡る旅路も心弾むに違いない。

 ≪王将戦誘致発起人は渡辺名人の親戚≫今回王将戦の誘致発起人となった市内の囲碁サロン「石心」席主の佃優子さん(53)は「予想以上の好カード。金沢はお祭り騒ぎで、普及効果抜群!」と手応えを語った。

 佃さんは囲碁界で広く知られる存在で、過去には女流アマ日本一に君臨。さらに「将棋の渡辺明名人(棋王との2冠)が遠縁」と語る。佃さんによると妹は囲碁棋士の佃亜紀子六段(51)で、その夫は将棋の伊奈祐介七段(47)。その妹で漫画家の伊奈めぐみさんの夫が渡辺という。将棋との縁もあり、約6年前から将棋教室も開講。昨年4月には将棋のタイトル戦を初めて誘致し、第80期名人戦を行った。

 2月18日には藤井、そして親戚の渡辺が対決する棋王戦第2局を県内で開催。「王将戦が起爆剤に。しっかり注目度を保てるように工夫をしたい」と意気込んだ。

 ≪忙しい藤井王将、夜は竜王就位式に出席≫藤井王将は金沢での「勝者記念撮影」後、北陸新幹線で東京入り。午後6時から渋谷区のセルリアンタワー東急ホテルで行われた第35期竜王就位式に臨んだ。昨秋の7番勝負で広瀬章人八段(36)を4勝2敗と下し、初防衛を果たした藤井竜王には竜王推挙状、竜王杯に加え、賞金4400万円が贈呈された。謝辞では「苦しいながらも充実したシリーズだったと感じています。第1~3局は自分の課題を強く認識させられ、第4局以降も難しい将棋ばかり。辛抱強く指すことを意識してなんとか結果につなげることができました」とあいさつ。将棋ファンで有名な来賓の「サバンナ」高橋茂雄(47)からも祝福を受け、終始笑顔だった。

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