「ちむどんどん」の料理 見栄えと味の両方を追求

[ 2022年7月13日 08:30 ]

連続テレビ小説「ちむどんどん」に登場した「魚とゴーヤーのてんぷら弁当」(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】13日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第68回に、ヒロインの暢子(黒島結菜)が作る「魚とゴーヤーのてんぷら弁当」が登場した。

 弁当は鶴見沖縄県人会の相撲大会の参加者らに配付。暢子の幼なじみで新聞記者の和彦(宮沢氷魚)は「今まで食べたてんぷらの中で一番おいしい」と舌鼓を打った。

 この作品の料理監修・制作を担当している「オカズデザイン」の吉岡秀治さんは「魚介のうま味が衣に染みるのを生かした味付けになっています」と説明する。

 視聴者はドラマに登場する料理を食べることができない。制作側としては見栄えが良ければ味にこだわる必要はないという考え方もできるが、ここでは両方が追求されている。

 「オカズデザイン」の吉岡知子さんは「両方を求められるので、それに応えられるように、演出の方と話し合いながら、ギリギリまで模索しています。映像としては分かりやすい方が良いのでしょうが、分かりやすくすることによって違う料理になってしまうこともあります。見え方と味を考えて『こんな感じでいかがでしょう?』と提案しています。やはり役者さんたちが実際に食べるものでもあるので、できる限りおいしくなるように作っています」と話す。

 秀治さんも「自分たちがふだん料理しているのと同じ状態で出したいと思っています。例えば炒め物の場合、なるべく火が入りたての状態で、役者さんたちに食べていただきたい。どのタイミングでカメラの前に持っていけば良いのか、日々勉強しています」と明かす。

 この作品で扱われる料理は多種多様。監修・制作に当たって苦労も少なくない。

 知子さんは「台本にあった料理を撮影直前に変更したことが何度かありました。それは時代背景の問題によるものです。現在は有名なイタリア料理で、その食材が当たり前に手に入るものであっても、暢子が働く1970年代には作ることが不可能なものがあります。具体的な例の1つとしては、トリュフ入りのリゾットがあります。その当時、物語で描かれている季節には、イタリア・ピエモンテを産地とする白トリュフが輸入されていなかったことが分かったのです。番組のイタリア料理考証の室井克義さん、制作統括の小林大児さんと相談しながら、急きょ、作るリゾットの内容を変更しました」と話す。

 複雑そうなイタリア料理も数多く登場するが、これまでの中で、作るのに最も苦労した料理は実は沖縄そばだったという。

 知子さんは「沖縄では古くから製麺機によるそば作りが広まったため、手打ちの具体的な方法が記された記録が見つかりませんでした。古い製麺機を使ってそば打ちをされている沖縄そば店を訪ね、実際に作業を見せていただいたり、手打ちの様子を聞いたことがある名人からアドバイスをいただいたり、そば職人と試作を重ねて何度も手打ちの方法を模索しながら、ひとつひとつ時間をかけて作りました」と明かす。

 暢子は勤務先のイタリア料理店で徐々に成長している。演じる黒島の腕前の向上ぶりはどうなのか。

 知子さんは「当初より格段に上達されています。ご本人も『家でかなり練習しています』とおっしゃっていました。ペペロンチーノを作る時にニンニクを横にスライスするシーンがあったのですが、かなり難しい作業なのに、きれいに切っていて、私より上手なくらいだと思いました。包丁を柔らかく使う動作も料理人らしくて、普段からの努力を感じます。イタリア料理指導の松本晋亮さんも『いちばん上達したのは黒島さん』とおっしゃっていました」と話す。

 秀治さんも「黒島さんは『最初はあまり上手ではないお芝居から入りたい』とおっしゃっていました。暢子がレストランで働く中で徐々に上達しているように視聴者に見てもらうため、自分の腕前も徐々に上がるように練習されて来たのだと思います」と語る。

 暢子は今後どんな料理を作っていくのか?物語後半の重要なポイントになりそうだ。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

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2022年7月13日のニュース