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松重豊 自制心・危機感は蜷川氏の教え“常に楽しさ疑え”今後は芝居以外も

「バイプレイヤーズ」名脇役インタビュー(5)松重豊(下)

蜷川幸雄氏に教わった自制心あふれる演技論は求道者のような松重豊(C)「バイプレイヤーズ」製作委員会
Photo By 提供写真

 遠藤憲一(55)大杉漣(65)田口トモロヲ(59)寺島進(53)光石研(55)=アイウエオ順=とともに、日本映画界に不可欠な名脇役6人による夢の共演で話題を呼ぶテレビ東京「バイプレイヤーズ〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜」(金曜深夜0・12)に名を連ねる俳優の松重豊(54)。昨年亡くなった演出家・蜷川幸雄氏に教えられた“危機感の持ち方”は若かりし頃から今も変わらず、求道者のようだ。今後は「芝居以外のことも」とチャレンジ精神旺盛。ベテランの域に入りなお、新しいアイデアをひねり出し、従来にない創作を追い求める。

 1963年、福岡県出身。高校の文化祭で8ミリ映画の監督をしたのが、この世界に入る原点。「逆噴射家族」「五条霊戦記」などで知られる石井聰亙監督(60=現在は石井岳龍に改名)ら「福岡発のおもしろい自主映画や音楽とのコラボレーションなどを見て、映画を撮りたいと単純に思って」上京した。映画に近いと思い、演劇学専攻のある明大文学部に進学。寺山修司氏主宰の劇団「天井桟敷」や唐十郎氏(77)主宰の劇団「状況劇場」などを見るうちに、映画より演劇に惹かれた。

 在学中には三谷幸喜氏(55)主宰の劇団「東京サンシャインボーイズ」に参加。1986年、大学卒業と同時に蜷川氏主宰の劇団「蜷川スタジオ」に入団した。演技がおもしろくなった転機を聞くと、自制心あふれる求道的な演技論が飛び出した。

 「正直に言うと、芝居をやっていて、おもしろくなったという感覚はないんですよね。芝居っていうのは毎回、謎が多く、謎と困難な状況を克服するまでのプロセスは非常に厳しいものがあります。乗り越えて、もう二度とやりたくないと思っても、また次に、そういう“エサ”をぶら下げられると、チャレンジしてしまう。僕は蜷川幸雄という人にすごく厳しく芝居のイロハを教わったものですから、やっぱり『自分の中で満足しちゃいけない』という思いがどこかにあります。楽しい、おもしろいと思った瞬間に『これは自分の中にダメな部分が生まれている』という感覚があって、おもしろいということをまず疑わないといけない。それは『バイプイヤーズ』にもつながるんですが、今回のように『楽しいということは、何か落とし穴があるはず』『ここに慢心してはいけない』という思いがあって。芝居をやっていて達成感だとか楽しいだとか、そういうことは正直、本当に思ったことがないんですよね。楽しい作品で、いい経験をしたということはあっても、それはそれで、どんどん切り捨てていかないと、次は来ないような職業なので。それは、昔から変わっていないですね。自分が楽しいとか、ずっとここにいたいと思った瞬間、そこが一番、危ない場所になっている感覚は常に持ち続ける。そういう危機感の持ち方というのは蜷川さんに教わりました」

 胸に刻まれた蜷川氏の教えは「山ほどあります」。当時は「『これでいい』と思って翌日も同じことをやると『どうして、おまえ努力していないんだ』と罵倒されてクビになったり。やっぱり、昨日と同じことはやりたくない、やっちゃダメだということですよね」

 89年、蜷川スタジオを退団。いったん俳優業を休業した。「これはね、その頃の自分に戻ってみないと分からないですが、蜷川さんのところを辞めた時点で、俳優という仕事を1回リセットしたかったという気持ちが一番強かったと思います」。建設会社の正社員になり、現場作業員として働いた。しかし、転落事故のため会社を辞めることに。同じ蜷川スタジオに所属した俳優の勝村政信(53)や現所属事務所社長らの後押しがあり、復帰。90年、舞台「LYNX」(作・演出鈴木勝秀)で勝村と共演。92年には映画「地獄の警備員」(監督黒沢清)で元力士の警備員を演じた。

 「こればかりは結果論なので何も言えないですが、当時のことを振り返ることも特にないですし(休業や復帰が)幸せだったとか不幸だったとか、考えることは特にありません」としながら、勝村については「昔から僕のことを買ってくれていて。アイツが先に蜷川さんのところを辞めて、第三舞台(主宰鴻上尚史)に行っちゃって。ヤツの方が最初に売れて、自分の好きなメンバーで芝居もできるようになって、僕を呼び戻してくれました。そういう仲間に恵まれたということは、思い返せば、一番感謝しなきゃといけないと思うんですよね」

 今後の展望を尋ねると「全くないですね。与えられた作品に真剣に向き合うということ以外は」。ただ、昨年10月からFMヨコハマの音楽トーク番組「深夜の音楽食堂」(火曜深夜0・30)のパーソナリティーを担当し「これは僕の趣味の延長線だと思うんですが、芝居以外のことも、いろいろやりたいと思っています」と柔軟な姿勢も示した。

 「映画やドラマに限らず、おもしろい挑戦があれば、そこに乗っかって、いろいろなアイデアをひねり出したいと思っているんですよね。今回の『バイプレイヤーズ』みたいに、作る側と僕らが一緒になって考えていけるものに関わりたいと思っています。バラエティーなのかドラマなのか分からない、ジャンルレスなものがあれば、チャレンジしてみたい。僕がやらせていただいている『孤独のグルメ』もドラマなのかドキュメンタリーなのか、分からないところの枠組み。人があまり考えていなかったところに、おもしろいものが転がっているんじゃないかと思います」とベテランになっても進取の気性に富む。

 どの質問にも的確に答えるクレバーさが印象的。松重の“次の一手”が期待される。

[ 2017年2月17日 08:01 ]

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