大入り!小池劇場 風を吹かせてバブルをキープ

[ 2017年2月13日 11:00 ]

 【小池聡の今日も手探り】有権者数4万7269人にすぎない首長選挙が全国ニュース扱いで話題をさらった。小池百合子東京都知事(64)と「都議会のドン」との代理戦争と言われた千代田区長選。2月5日に投開票され、知事が支援した無所属の現職候補が大勝。主演、演出、脚本、プロデュースと4役をこなしているかのような小池劇場が再び大入りを記録したといったところか。

 知事が「都議会のドン」と指摘したのは、前自民都連幹事長の内田茂都議(77)で千代田区選出。知事はあたかも“守旧派”“抵抗勢力”退治と言わんばかりに、5選を目指した現職を支援。内田氏が擁立の中心となった無所属で自民推薦の新人と事実上の一騎打ちとなった戦いは、ふたを開けてみれば、1万6371票対4758票のトリプルスコア超え。「東京大改革」を錦の御旗に据えた代理戦争との印象を強く与え続けた演出の勝利とも言える。

 小池バブルの勢いを見るため、参考までに昨年7月の都知事選における千代田区の数字と比較してみたい。投票率は知事選64・65%、区長選53・67%と下がったものの、知事選での小池氏が1万4731票、区長選での知事支援候補が1万6371票と1640票上積み。得票率は48・43%から65・21%と16・78ポイントもアップしている。

 ただし、両選挙は構図があまりにも違う。知事選では自民、公明、日本のこころが元総務相の増田寛也氏を、民進、共産、生活、社民がジャーナリストの鳥越俊太郎氏をそれぞれ推薦。区長選では公明と共産が自主投票とし、民進は現職を事実上支援。知事に有利な力学が働く環境を整えての選挙であった。

 こうした事情を踏まえ、自民支持層も多く取り込んだ区長選を選挙のプロはどう分析しているのか。長きにわたり選挙と政局の情報収集に携わる永田町の住人は「数字だけ見れば、小池バブルの勢いはパワーアップと映るが、各党の立ち位置などを考えればキープ」と冷静に分析した上で、「都知事選から半年も経過していることを考えれば、そのキープ力に注目すべきだ」と強調した。

 キーワードは「風」で、「東京は無党派に代表されるように“風”の要素が強い。生活が安定している人が比較的多い千代田区ではとりわけそうだ。“風”で支持した人は離れやすいというのが相場。それを都知事選以降もつなぎ留めているところが凄い」と解説。「有権者数が少ないとはいえ、区長選では“風”の力があらためて立証された。東京全体で考えれば“風力”はもっと強くなる。自民都連にとっては脅威」と付け加えた。

 「東京全体」とは都議選(定数127、6月23日告示、7月2日投開票)を指したもの。その前哨戦と位置付けた区長選の大勝を受けて、知事が事実上率いる地域政党「都民ファーストの会」は、都議選で70人規模の公認候補擁立の検討を始めた。これまでは40人規模。単独過半数(64)獲得を視野に入れた脚本の“上方修正”だ。

 内田氏は引退する方向で、小池劇場の脚本に必要不可欠な敵役はどう描いていくのか。永田町の住人は「築地市場の豊洲移転決定に際し都議会自民党がどのような対応を取ったかをクローズアップさせていくのだろう。“風”は自然と吹くものではなく、自ら吹かせるもの」とプロデュースの方向性を予想した。

 ところで、小池劇場の主役はどこに向かうのか。首相の座を狙っているのではないかとの声も聞かれる。政府関係者は「このままの情勢で推移すれば、2020年東京五輪・パラリンピックは安倍政権下で開催。ならば、その直前とみられる知事選で再選を果たし、祭典を迎えたいと考えるのではないか。年齢を抜きにしても、その後の総選挙のことまではなかなか見通せない」と指摘。「いずれにせよ、時の政権とぶつかれば五輪は成功させられない。官邸と手を握りつつ、都議会自民党とけんか…綱渡りが続く」。常に政敵を置き気の休まらない日々の中で、最終章の構想は練られていくのかもしれない。(編集委員)

 ◆小池 聡(こいけ・さとる)1965年、東京都生まれ。89年、スポニチ入社。文化社会部所属。趣味は釣り。10数年前にデスク業務に就いた際、日帰り釣行が厳しくなった渓流でのフライフィッシングから海のルアー釣りに転向。基本は岸からターゲットを狙う「陸(おか)っぱり」。

続きを表示

2017年2月13日のニュース