球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

オーナーに“難問”…新たな見えない敵への対応策

[ 2016年1月24日 05:30 ]

 5年間続いた現行の労使協約は、12月1日に失効する。選手会との新協約締結交渉に向けて先週、フロリダ州でオーナー会議が開かれた。財政問題、トレード期限の変更、指名打者制など諸懸案の検討である。異例だったのが国土安全保障省(DHS)との話し合いだ。

 2日間の会議の初日、7台の車列を連ねジェイ・ジョンソン長官が乗り込んできた。球場のテロ対策について意見交換するためだ。AP通信によると、ジョンソン長官はテロ対策の現状を1時間にわたって話した後、オーナーたちからの質問に応じたが、メディアの取材には応じなかったという。対策の手の内は明かせない、ということだ。

 オーナーたちは「難しい問題を抱え込んだ」という思いがありありだった。昨季から大リーグ全球場で全観客が金属探知ゲートから入場している。「さらにファンに不便を強いるのか…」とホワイトソックスのジェリー・ラインズドルフ・オーナー。ファンはバッグの持ち込み一切禁止、軽食の持ち込み、場内販売員の売り歩きもノーなど、厳しい規制案が出たらしい。

 駐車場では車のトランクや床の下側の検査も欠かせない。カブスではシカゴ市と協力して試合日は球場周辺の道路を交通規制し緊急用車両が入れるようにする準備を進めているという。困ったのは都心の球場だ。緊急時用の広いスペースが確保できないのだ。ヤンキースのハル・スタインブレナー共同オーナーは「何とかしなければいけない。早速検討する」。

 昨年12月にカリフォルニア州で過激派組織「イスラム国」(IS)の影響を受けた夫婦のテロが発生した。危機は現実の問題だ。選手会とは20年ものストなしの友好関係で、もう敵ではない。新たな見えない敵にどう対応するか、難問だ。 (野次馬)

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