球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

ポストシーズン初の女性解説者が見せた鋭い分析

[ 2015年10月11日 05:30 ]

 ワイルドカードゲームでヤンキースがアストロズに敗れ、ポストシーズンから姿を消した試合で、史上初の女性によるポストシーズン試合の実況解説が行われた。ヒロインはソフトボールの五輪メダリスト(アテネで金、北京で銀)ジェシカ・メンドーサさん(34)。8月、レッドソックスなどで通算216勝を挙げたカート・シリング氏がイスラム教徒とナチスを同一視する投稿をしてスポーツ専門局ESPN局から「謹慎処分」になり、その代役を務めた女子スポーツ専門の解説者だ。巧みな彼女の解説が局内で評価され、大抜てきとなった。

 広い国土にたくさんの地方局が散らばる電波メディアのスポーツ部門は競争が激しい。全米をカバーするESPNやFOXのアナウンサーや解説者は業界トップとされ、元大リーガー、有名記者、有名フロントなどがその椅子を争う「セレブ職」だ。さらに全米ファンが注目する大試合の担当となると…。

 ニューヨーク・タイムズ紙の「TVスポーツ」コラムは、彼女の解説はファンに好評と伝えた。3回アストロズのジョージ・スプリンガーがヤンキース田中のスプリットを捕手寄りに立って打ち、中堅ガードナーの頭上を抜く二塁打にした場面で、瞬時に投球の選択と守備位置との関係を話したのが際立っていた、と褒めた。来季はレギュラーの解説グループ入りらしい。

 むろん男性陣の嫉妬はある。「大リーグ中継に女の声は不要」、「ソフトボール出身者に野球が分かるか」などとブログでやり、炎上、謝罪が続出した。メンドーサさんは「父は野球のコーチ、私は野球からソフトボールへの転向者」と言って、明かした挿話。シリング氏が「タナカの投球について事細かに教えてくれた」と。さすが大物シリング氏、放言癖をリカバーするいい話だ。 (野次馬)

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