球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

数々のレジェンドたる挿話に沸いた殿堂入り式典

[ 2014年8月3日 05:30 ]

 先週の殿堂入り式典のいかにも大リーグらしい「ちょっといい話」の紹介。殿堂のある人口約2000人のクーパーズタウンに4万8000人ものファンが集まった。ブレーブス・ファンが多かった。殿堂入り6人のうち、ボビー・コックス元監督、グレグ・マダックス、トム・グラビン両氏とブレーブスOBが3人いたからだ。

 2人が掲額の肖像レリーフの帽子にチームロゴを入れなかった。監督としてアスレチックスとカージナルスでワールドシリーズを制したトニー・ラルーサ氏とカブス、ブレーブスで10年ずつ投げたマダックス氏だ。所属した2チームに感謝し、そうしたという。最長スピーチは涙を流し、声を詰まらせ30分近く話し続けたフランク・トーマス氏。支えてくれたチームメート、関係者、家族たち110人の名を挙げた。「長すぎたけれど、許してください」と強打者は結んだ。ジョー・トーリ氏は「ヒデキ・マツイがヤンキースに入団した時、日本の本塁打王なので“エンドランのサインを出してもいいか?”と聞くと、“何でもOKです”の返事。私はこういう犠牲的精神を持った選手たちに恵まれ、ここにいる」。

 ブレーブスで14年連続地区優勝、リーグ優勝5回、ワールドシリーズ優勝1回のコックス氏は大喝采を受けた。「2死二、三塁だ。マウンドのグラビンと駆けつけた三塁手に“打者を歩かせる”と告げた。“マジですか?”と言う。見回すと一塁にも走者がいて満塁だった。ワシは厳しい声を出した。“いいか、このことがあすの新聞に出ていたら、おまえたち2人には1000ドルの罰金だ”と」。殿堂は野球のショーウインドー。そこに並ぶにふさわしい挿話に満ちた式典だった。 (野次馬)

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