球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

Aロッド薬物判決確定…解決ではなく第2章幕開け

[ 2014年2月9日 05:30 ]

 ヤンキースのアレックス・ロドリゲスが、禁止薬物使用で大リーグ機構(MLB)から科せられた162試合出場禁止の撤回を求めた訴訟を取り下げた。裁判でも勝ち目のないことをようやく悟ったのだ。被告にされ、「魔女狩りだ」とののしられたMLBは「ロドリゲス氏は出直しを誓う行動をした」と「称賛」した。「選手を守る義務を怠った」と、こちらも被告となり、激怒した大リーグ選手会も「ロドリゲスは正しい行動をした」と声明を出した。

 不毛の裁判回避は、MLBにとって朗報だった。しかし、薬物問題のこれからとなると、問題は多い。MLBのAロッドに対する証拠集めは強引だった。薬物を渡した診療所から盗み出された文書を買い集め、関係者を脅して証言を強要した。こんな強引なMLBの調査を選手会までもが放置したのは、Aロッドの長年の薬物使用とその隠蔽(いんぺい)工作があまりにひどかったからだ。ドーピング検査で陽性反応が出なくても状況証拠で有罪にした今回の措置は、全米反ドーピング協会から絶賛された。しかし、このやり方はもろ刃の剣で選手協会との新たな対立を生む恐れがある。

 バド・セリグ・コミッショナーは来季限りでの引退を表明している。「商売優先で薬物汚染を見過ごしたコミッショナー」の汚名は強引調査の成果で免れたが、後任コミッショナーはどうするのか。現時点で最有力候補のボブ・マンフレッドMLB首席運営理事はAロッド調査の総指揮を執った人物だ。「猟犬の役目は終わった」と球界外部から招くべき、との声も出始めた。

 折から薬物使用歴のある選手の高額契約や監督、コーチ就任も広がる。荒療治の後、大リーグの薬物との闘いは第2幕が始まる。  (野次馬)

続きを表示

バックナンバー

もっと見る