球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

富裕層が“もうかる”破産デトロイトの公費の使い道

[ 2013年10月20日 06:00 ]

 タイガースの本拠地デトロイト市は7月に破産した。市内の街灯40%が消え、人口は減り、失業率は17%の高止まり、警官の削減で犯罪は増加した。しかし、今季のタイガースの観客動員308万人は30球団中第6位、チームの専門テレビ局の視聴率は球界トップに迫った。2年連続でア・リーグ中地区優勝し、プレーオフで戦うチームが市民の消費を促し、苦しむ市のカネ回りを良くしているとも読める数字だ。しかし、現実は厳しい、とニューヨーク・タイムズ紙は指摘する。

 対レッドソックス戦、4万2000人の観客のほとんどが郊外の高級住宅地から車で来る白人の富裕層。記者会見では「貧困率40%の街で高給をとっていて罪悪感はないか」という質問も出た。ムッとする選手の中でアレックス・アビラ捕手が「市の状況を心配している。我々のモチベーションは勝利で市民を元気づけ、街を活気づかせることだ」と優等生の返事で応じた。

 市施設の閉鎖で市民生活への公共サービスが低下し、2000年に誕生したホーム球場の建設費300億円のうち100億円の公費が使われたことも問題視され始めた。

 さらにタイガースのオーナー、マイケル・イリッチ氏所有のプロアイスホッケーチーム、レッドウイングス用の新競技場建設に市が280億円もの公費を投資する計画が明らかになった。市長はこれが市の再開発につながり、8300人の雇用創出とうたう。スポーツ便上で景気浮揚を狙うのは政治家の常道だ。「破産した市が税金でカネ持ちをもうけさせるとは」。反対運動の声が選手への厳しい質問につながったのだ。  (野次馬)

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