元甲子園球児の記者が進化するデータ野球の世界を体験!西武&平良が全面協力 球速5キロアップ

[ 2024年2月27日 05:30 ]

平良に指導を受ける福井記者(撮影・西尾 大助)
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 またやってみました!回転数、回転軸など、投球の全てが数字で可視化される近年の野球界。県岐阜商出身の本紙西武担当の福井亮太記者(28)が、進化するデータの世界を体験した。西武球団と平良海馬投手(24)の全面協力もあり、25日まで行っていた宮崎・南郷キャンプ中に弾道測定器「ラプソード」で投球データを計測。プロ野球選手の凄さと、最新機器を駆使して生み出される球質の変化を実体験した。

 夢にまで見た光景だった。プロ野球選手が使用するブルペンで、背後には「データマスター」の異名を持つ平良投手がいる。元高校球児の血が騒ぐ。ラプソードでの計測は初体験で、プロと一般人との間には一体どれほどの数値差があるのか。平良投手をはじめ、球団の全面協力を得ての検証企画。まずは無心になって、思い切り直球を投げ込んでみた。

 球速108.6キロ。トータルスピン(※1)の量は1544と表示された。NPB投手の直球における回転数の平均値は約2200回転。実に700回転もの差があることが分かった。

 次に注目したのがボールの伸びを示す縦変化量(※2)。記者の数値は44.7センチだったが、平良投手でも40センチ台後半~50センチほどなのだという。平良投手からは「めちゃくちゃいいボール。縦変化量44.7センチは僕と変わらないくらいボールが伸びている」と、まさかの“お墨付き”ももらった。

 はじき出された数値を基に、記者のパフォーマンス改良を試みるのも、企画のもう一つの趣旨。“伸びるボール”を目指して2球目を投じた後、平良投手から「手首を親指側に傾ける撓屈(とうくつ)をしてみてください。より直球の回転軸が垂直になるので」とアドバイスを受けた。

 言われるがまま、手首を親指側に傾けて投げてみる。すると、どうだ。球速は5キロも上がり113.4キロ、トータルスピン量は1726に増加し、縦変化量は1.4センチもアップの46.1センチ。即座に改善された要因は、ボールの回転軸にあった。

 回転軸を表すスピンディレクション(※3)を見ると、変化は一目瞭然だった。地面に対して垂直で真っすぐなバックスピンを、アナログ時計における短針の0時のラインと定義。つまり、短針が0時に近い数字が理想の縦回転となる。

 記者の場合、1球目は1時6分だったが、2球目は0時54分。2球目の方が、短針は0時に近く、理想の縦回転に近いボールを投げたことになる。平良投手からも「時間軸の回転軸が0時に近づいたことで縦変化量が上がった。球速も上がっているので、トータルスピン量も上がって良いボールになった」という解説を聞いて納得。手首の角度を意識するだけで、ここまでボールに変化が出るとは驚きだ。

 プロの投手はさまざまな要素を数値化し、日々、研究を重ねている。平良投手は先発挑戦時に習得したツーシームをはじめ、全ての変化球をラプソードの数値から計算して開発。「リリースの角度は1度単位だし、本気で投げた時はどうなのか、とか。失敗して、いろいろ覚えていった感じ」。何百球も投げて精度を高め、習得に至ったという。データで可視化される近代野球の進化とともに、緻密に技術を高めるプロの凄さを肌で感じることができた。(福井 亮太)

 ※1 1分間あたりにボールが何回転するかを表す。
 ※2 ボールがどれだけ伸びているかを表す数字。高くなるほど、ホップ成分が強くなる。
 ※3 ボールの回転軸。時計の短針が向く位置で表す。 

 ≪平良のモットー「データはうそをつかない」≫平良は常にセオリーを疑い続けている。一般的に「低めに投げる」が投手の基本と言われるが「何のために低めに投げるかが曖昧になっている」と言う。

 武器である最速160キロの直球は、高めでこそ威力を発揮すると分析。「世界的にもその流れがあるし、高めの方が空振りもファウルも取れる」とする。昨年はトップ選手にデータ解析サービスを提供する「ネクストベース」に自腹で配球分析を依頼。「感覚が一番、当てにならない。データはうそをつかない」がモットーだ。

 自身のYouTubeチャンネル「たいらげーむ」でもラプソードの解説を配信。「アマチュアのチームがラプソードを買うきっかけになれば。そういう時に動画を見て、理解してくれたらうれしい」と積極的にデータの重要性を発信していく。

 ≪西武]導入「VR練習」体験記者は空振り≫西武は最先端の「バーチャルリアリティー(VR)練習」を昨季途中から導入し、今春キャンプでも実施。装着したゴーグルに投手の映像が映し出され、実物同様の球速、変化球の軌道が体感でき、バットを振ってタイミングを計る。外崎は「戦ったことのない投手のイメージや変化球の軌道が分かる」と説明した。こちらも球団全面協力でプロ野球キャップの神田佑記者が体験。仮想世界でバットが空を切り、選手からヤジられた。

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