上沢直之という男 マイナー契約は「難しい」から一転はい上がる道を選択 苦しんだ意味を探す旅に出る

[ 2024年1月12日 16:02 ]

上沢直之
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 日本ハムからポスティングシステムでメジャー移籍を目指していた上沢直之投手(30)が、レイズとマイナー契約を結んだ。11日(日本時間12日)、球団が発表した。春季キャンプには招待選手で参加するという。

 上沢は球団を通じて「レイズの一員になれて、大リーグのキャリアをスタートさせる機会をいただけて興奮している」とコメントした。交渉期限は米東部時間で11日午後5時(日本時間12日午前7時)で、まさに「駆け込み」での合意となった。

 希望通りのメジャー契約とはならなかった。それでもマイナー契約でも米国に渡るのは上沢らしいと感じた。契約更改交渉後にメジャー挑戦を表明した2022年12月1日。マイナー契約でも米国に渡りたいかを問うと「そこは難しい。家族もいるので、無理させることはできない」という反応だった。それでも上沢の考えにはこんなポリシーがある。

 「うまくいかないから投げ出したりとか、そういうことはしたらよくない。自分がプレーしている間にうまくいかなくても、野球が終わった後に役立つかもしれない。うまくいかない時期は必ずくる。どうしても結果が出なくなると練習のモチベーションにも関わってくることがあった。これをやってることに意味があるのかなと感じる場面もあった。それが野球に直接つながっていなかったとしても、その日休んだら、休んだ分やらなきゃいけない。もしつながらなかったとしても、頑張った結果がこれから先の人生に生きてくるかもしれない」

 今回は自身が望むような契約は取れなかったかもしれない。それでも上沢はメジャー挑戦を諦めるのではなく、マイナー契約からはい上がることを選んだ。19年には選手生命を絶たれかねない左膝骨折の大ケガを負った。「野球がいつできなくなるか分からないと実感した。やれるうちにやらないといけない」。メジャー挑戦は今回の1度きりと考えていた。家族も上沢のメジャー挑戦に懸ける熱い思いを意気に感じ、背中を押してくれたのだろう。

 19年に左膝を骨折した直後の病室。見舞いに訪れた、当時監督の栗山英樹氏(現日本ハムCBO)と2人で涙したことがある。「こんなに苦しんで、どんな意味があるんですかね」という上沢に、栗山氏は「必ず意味があるんだ」と励ましたという。「その答えは引退する時にしか出ないかもしれない。苦しかったり、大変だったり、ダメだったりした時にどう生きるかが人間としての勝負だと思っている」とも付け加えた栗山氏。メジャー挑戦は「その答え」を探しに出る旅にもなる。

 メジャー挑戦を相談してきた元同僚の有原(現ソフトバンク)はメジャー通算15試合で3勝7敗、防御率7・57と苦戦した。上沢は「だからこそ、何が違うんだろう…と。ズタボロになってもいい。経験することが凄く大事。経験しなかったら何が凄いのかも分からず、そのまま人生終わるって、人生無駄にした気持ちになると思う。一度きりの人生なので挑戦したい」と熱っぽく語ったこともある。

 日本ハム担当の前にはメジャー担当も経験した。野球の原点、異国の文化に触れ、時にはメジャーの厳しい洗礼を浴び、人間的に成長する選手を何人も見てきた。上沢には人間的にさらに成長し、周囲の下馬評を覆す快投を見せてもらいたい。(2018~2022年日本ハム担当・東尾 洋樹)

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