中畑清氏 オリックス「自分たちの野球」取り戻す継投で「神」封じ

[ 2022年10月27日 05:30 ]

SMBC日本シリーズ2022第4戦   オリックス1―0ヤクルト ( 2022年10月26日    京セラD )

<オ・ヤ>初回、チャンスで内野ゴロに倒れる村上(撮影・岡田 丈靖)
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 【中畑清 日本シリーズ大分析】ヤクルトの2勝1分けで迎えた日本シリーズ第4戦は、オリックスが1―0で逃げ切り、初勝利を挙げた。4番の村上を3打数無安打1四球に抑えての完封リレー。本紙評論家の中畑清氏(68)はシリーズの流れを変える1勝と位置づけ、パワーピッチャーをつぎ込む中嶋監督の継投策が実ったとした。(構成・永瀬郷太郎)

 単なる1勝じゃない。セ・リーグの3冠王を完全に封じての完封勝利。これでオリックスの選手が「自分たちの野球をやれば勝てる」と思えたとしたら、このシリーズは最後までもつれると思う。

 絶対避けては通れない村上に対し、決して逃げることのない真っ向勝負。まずは先発の山岡だ。初回1死一、二塁で迎えた第1打席は3ボールから縦の135キロのスライダーでストライクを取り、5球目は115キロのチェンジアップでタイミングを外し、二ゴロに仕留めた。3回2死一、二塁の第2打席はフルカウントから縦のスライダーを振らせて三振。緩急を生かした山岡らしい投球だった。

 1点を守る展開になった6回先頭の第3打席は、5回1死三塁のピンチで登板して山崎、山田をフォークで連続三振に仕留めて、回またぎとなる宇田川だ。フォークは使わず、6球全て真っすぐを投げ込んだ。フルカウントから四球になったが、攻め込んでいった結果。後に引きずることはなかった。

 8回の第4打席も宇田川に続いて、パワーピッチャーの山崎颯。こちらも150キロ台の真っすぐを続けた。2―2から1球フォークを投じたが、7球中6球真っすぐで最後は外角高めの159キロで差し込み、左飛に抑えた。いやあ、見応えがあったね。

 若手の中継ぎ陣がパワーで相手バッターを圧倒する。これぞ、2年連続でパ・リーグを制したオリックスの野球。平野佳、阿部が打たれて不安だった抑えも、ワゲスパックを投入して1点のリードを守り切った。

 5回途中から継投に入った中嶋監督の「この1点を守り抜く」という執念、覚悟でつかんだ勝利。27日の第5戦、先発の田嶋が長い回を投げて、この日回またぎの宇田川、山崎颯を休ませて勝つことができれば…。いや、2人には「今日も行きます」という気概を見せてほしいな。

 ようやく1勝を挙げたオリックスだが、打線に火が付いたわけじゃない。初回の攻撃では受け身の姿勢が気になった。

 山岡が無死一、二塁のピンチを切り抜けた直後、1番に抜てきされた佐野皓が初球をつかまえて左翼線二塁打したまでは良かった。ここで1点を取れば、一気に主導権を握れた場面で2番の宗が初球ボールの後、外角のストライクになる真っすぐを2球連続見逃し、4球目のワンバウンドになるカットボールを振らされて三振した。

 いかにも淡泊な打撃で二塁走者を進めることができなかった。続く中川圭は右飛。進めておけば十分、1点入る打球だった。2死一、三塁と姿を変えた場面では5番に入った頓宮が初球から2球続けてストライクを見逃した。結局は四球を選ぶのだが、初球から打ちにいってほしかった。

 虎の子の1点を奪ったのは3回、杉本の適時打。初球ボールの後の2球目、低めのチェンジアップを左前に運んだ。ファーストストライクを捉えた一打。この積極性を全員で共有してもらいたい。

 ヤクルトにとってこの1敗は決して尾を引くものではない。星勘定としては2勝1敗1分け。第5戦を落としても2勝2敗1分けの五分で神宮に戻れる。

 試合内容も悪くはなかった。送るべきところは送り、走者を進めるところは進める。しっかり形をつくりながらオリックスの執念の継投の前に、ここぞの一打が出なかっただけだ。

 気になることがあるとすれば、27日の先発だ。レギュラーシーズンで2試合しか投げていないルーキーの山下が登板する。去年のシリーズ第2戦、完封勝利を挙げて日本一に向けて勢いをつけた高橋の再来を期待しているのだろうか。

 高津監督のことだ。原をロングリリーフに回してルーキーを大舞台の先発マウンドに送り込むのは、それなりの期待を持っての策に違いない。山下がどんな投球をするか。とくと見させていただきたい。

 ≪PS7回投げた先発 エース由伸除き0人≫オリックス・中嶋監督はポストシーズンで早い継投策が目立っている。ソフトバンクと対戦したCSファイナルステージ第1戦で8回を投げたエースの山本を除き7回を投げた先発投手は一人もいない。日本シリーズでは第2戦で山崎福が4回、この日の山岡が4回1/3を無失点ながら早々と交代している。

 ≪初戦から4戦連続ノーアーチ≫オリックスはシリーズ第1戦から4試合連続本塁打0。1シリーズの最多連続試合ノーアーチは11年中日の6試合(第2~7戦)。初戦からに限ると、14年阪神の5試合が最多で4試合は51、65年南海、71年阪急、99年中日、05年阪神とあり、今回のオリックスは51年ぶり2度目の球団ワーストタイ。なお、シリーズを通じ本塁打0に終わったのは05、14年の阪神だけ。

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2022年10月27日のニュース