イチローも一目置いた阪神・岡田彰布の打席に向かう姿勢「誰より落ち着き払って、地に足付いていた」

[ 2022年10月27日 07:00 ]

03年オフに新春対談を行った(左から)岡田監督、仰木彬氏、イチロー
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 【岡田の考え<10>】日米通算通算4367安打のイチローが一目置いたのが、岡田彰布の打席に向かう姿勢だった。「岡田さんと言えば、あのタイムリー。今でも鮮明に覚えています」。前回の監督就任直後の03年オフ、スポーツニッポンの新春対談で岡田と再会したイチローは、オリックスとしての初優勝を飾った95年の終盤を振り返った。

 「あのときは経験が少ない選手が多くて、みんな浮き足だっていた。とても自分の力を出せる状況じゃなかった」と語った。選手がガチガチになる中、スタメン起用された岡田はロッテ戦でタイムリーを放ち、選手に見本を示した。呪縛から解き放たれたチームは3日後の95年9月20日に優勝を決めた。イチローは「見ていて経験の大きさを感じた。誰よりも落ち着き払って、地に足がついていた。さすがだと思いました」と岡田の気持ちと準備をリスペクトした。

 監督としても準備に一番の時間を費やすのが岡田のスタイルだ。毎試合、トレーナー、コーチからの報告で選手の状態を把握。他球団の前夜の戦いをチェックし、スコアラーの報告に耳を傾ける。さらに今後の日程、天気予報、1、2軍の入れ替え…あらゆる情報を精査し、スタメンを組み、試合の展開を考える。「準備というのは最悪を想定していかないと。あわよくば、という願望で野球をしてたら勝てへん」の言葉は何度も耳にした。最悪を想定するからこそ、どんな場面になっても慌てることはない。

 だからこそ、勝負のグラウンドでは「何もせんで勝つのが理想。知らん間に勝ってるというのが目指すところや」と準備を整えた上で、選手が意図した通りに動く野球を第一としている。上位が出塁し、クリーンアップで得点。あらかじめ決めていた継投でリードを守る。勝負師は野球というスポーツを、シンプルにパターン化することに精力を注ぐ。

 相手を打ちあぐんでいるときの「円陣」も岡田は好まない。「狙い球を絞ろう、とか変えていこうという動きをなんで相手に伝える必要があるんよ」と、円陣を組まなくても、指示が伝わるシステムを今回も構築するはずだ。本塁打を放ったときの「虎メダル」も同様だ。失点を許した後に、相手ベンチにどんな動きがあるのか。そこを岡田は見る。選手にメダルをプレゼントするより他にやるべきことがある。就任会見でも「ファンサービスには専門の人がいる。ファンに喜んでもらえるのは勝つことや」と語った。秋は岡田の考えを浸透させるための季節だ。 =敬称略・終わり= (鈴木 光)

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2022年10月27日のニュース