【内田雅也の追球】監督落選から名番頭へ 阪神・平田ヘッドコーチ「岡田監督を男にしたい」

[ 2022年10月27日 08:00 ]

<阪神秋季練習>階段を使ったトレーニングで汗を流す才木(手前)に声をかける平田ヘッドコーチ (撮影・後藤 大輝)
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 甲子園での秋季練習で見える、その表情や立ち居振る舞いから答えはわかっていたが、平田勝男に嫌な質問をぶつけてみた。この秋の監督問題についてである。

 阪神新監督に就いた岡田彰布とともに2軍監督だった平田も監督候補だった。監督の座を争い、敗れた相手を補佐する役目として、今のヘッドコーチの自分がある。どういう心境なのか。

 「そんなこと」と言った。「なんちゅうこともないよ。こういう定めというかな。運命よ。オレに力がなかったということよ。それに人間、何が幸いするかわからんよ。塞翁(さいおう)が馬だよ。オレはこれで良かったと思っている」

 実にさっぱりとして、すがすがしく、気持ちがいいほどだ。監督の争いの勝者も敗者もない。

 「とにかく、岡田さん……岡田監督の力になって、何とか優勝監督にしたい。男にしたい。心から思っているよ」

 監督を立て、「ナンバー2」としての慎み深さと献身や利他の姿勢がにじみ出ている。もう17年も前のことだが、前回優勝の2005年、監督・岡田を支えたのもヘッドコーチの平田だった。「夢よ再び」である。

 日本シリーズ開催中である。「テレビで見ていてはダメよ。あの舞台に立たなくちゃ。立てるだけの力はあるんだから」と前を向いている。

 「オレの背番号の意味、知ってるやろ?」と言った。「78」は島野育夫の背番号である。星野仙一を支える名参謀として中日でも阪神でも優勝する陰の立役者だった。平田が描く理想の補佐役である。読書家の平田らしく「豊臣秀長のように」と天下統一を補佐した武将を例にあげた。

 「もう一つの意味は七転び八起き」と言った。平田も阪神も優勝には遠く届かない、苦しい時代が長かった。幾度もどん底を味わったからこそ、勝利への渇望がある。

 練習中に球団本部部長の木戸克彦もグラウンドに姿を見せ、三塁ベンチで岡田と話していた。目の前で、スコアラーからバッテリーコーチに就いた嶋田宗彦がノックを打っていた。

 1985(昭和60)年日本一の懐かしい面々が顔をそろえていたわけだ。岡田が目指す「オールタイガース」の挙党一致が垣間見える。そんな体制の番頭役として平田はいる。 =敬称略=
 (編集委員)

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2022年10月27日のニュース