緊急出場・近江 延長13回タイブレーク魂の1勝 京都国際の分も…エース山田V打&165球完投

[ 2022年3月21日 05:30 ]

第94回選抜高校野球大会第2日第2試合・1回戦   近江6ー2長崎日大 ( 2022年3月20日    甲子園 )

<長崎日大・近江>延長タイブレークを制して笑顔の近江ナイン(撮影・大森 寛明)
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 1回戦3試合が行われた。選抜史上初の滋賀―長崎対決となった第2試合では新型コロナウイルスの集団感染のために出場辞退した京都国際に代わり、繰り上げ出場となった近江(滋賀)がエース山田陽翔の165球完投で、今大会初の13回タイブレークの末、長崎日大を下した。2点を追う9回に同点に追いつき、延長戦で粘り勝ちだ。急きょ出場した聖地で価値ある1勝を挙げた。

 気持ちをこめた165球目。勝利とともに山田が右手を高く突き上げた。右肘痛で新チームでは公式戦初登板。それでも最後まで集中力を維持した。13回完投。マウンドに仁王立ちした。

 「自分としては思った通りの投球ができた。感触も良かった。肘も全く問題なく投げることができた。競った試合を勝てたのは自信になります」

 白星を引き寄せた。今大会初のタイブレークに突入した延長13回無死一、二塁。迷いはなかった。ひと振りで決める。チャンスにだけ演奏される近江の魔曲「ファイヤーボール」が背中を押した。エースで4番、そして主将の責任。そして背負った京都国際の思い。初球の113キロを打ち返すと、打球は三遊間を破った。決勝打だ。

 「攻撃とは攻めること。初球からどんどんいこうと思っていた。うまく叩けてうれしい。負けるとは思っていなかった」

 ネット裏にはNPB12球団のスカウトが顔をそろえた。投手としても、打者としても注目される二刀流。5回1死から勝野凌空を空振り三振に仕留めたのが、この日最速の146キロ。13回の164球目にも142キロをマーク。力感があふれた。延長10回1死満塁のピンチにも「気持ちを引かずに強気でいった」と松尾一樹を三飛、勝野凌空を空振り三振。終盤7回からは7イニング無安打無失点。魂の投球に、1万6000人の甲子園も震えた。

 大会前日の17日に代替出場が決まった。18日に京都国際・小牧憲継監督から「迷惑をかけます」の電話を受けた多賀章仁監督は試合前に「思いを持って戦おう」と訓示した。「山田が応えてくれた。魂の投球、入魂の打撃でした」と指揮官も賛辞を惜しまなかった。

 肘の不安、実戦などの不足、そして補欠校とされたときの悔しさ。積もる思いも試合前夜に母・淳子さん(46)が用意してくれた大好物のすき焼きでリセットできた。「夏のベスト4を超えて、日本一に」とエースは高みをにらんだ。(鈴木 光)

 ◇山田 陽翔(やまだ・はると)2004年(平16)5月9日生まれ、滋賀県栗東市出身の17歳。治田西小1年から治田西スポーツ少年団で野球を始め、栗東西中では大津瀬田ボーイズに所属。近江では1年夏からベンチ入りし、同年秋から背番号1。最速148キロで変化球はカットボール、スライダー、カーブ、フォーク。高校通算30本塁打。1メートル74、80キロ。右投げ右打ち。

 ≪選抜史上2度目≫大会2日目の近江―長崎日大は延長12回までに決着が付かず、選抜史上2度目のタイブレークに突入した。タイブレークは選手の健康管理や大会日程の円滑な消化などの観点から早期決着を促すべく、13回から無死一、二塁の状況で始める。決着がつくまで続行されるが、1投手が登板できるのは15イニングまで。18年の選抜から導入され、春夏の甲子園大会では通算5度目の適用。

 ≪補欠校30年ぶり初戦突破≫京都国際の辞退により出場が決まった近江が初戦を突破。補欠校の出場は13回目で、初戦を突破したのは第64回大会の育英以来30年ぶり4校目。

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