【内田雅也の追球】「1・01の法則」 「1」が1・32に、37・8に…1%が集まる予感がする

[ 2022年2月11日 08:00 ]

<阪神春季キャンプ> ケースノックではミスが多く、木浪(右から2人目)と熊谷(左)が投手陣と話し合う (撮影・平嶋 理子)
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 宜野座ドームの前で久しぶりに阪神球団副社長・谷本修に会った。今キャンプの状態を聞くと「まあ、まだまだこれからでしょう」と言って、少し笑った。そして、聞き違いだろうか、「厳しい論評をお願いします」と付け足した。

 ならば厳しく、というわけではないが、午前にあった走者を付けての試合形式の守備練習「ケースノック」を書いておきたい。今キャンプ初めて行ったメニューだった。

 ミスや失敗が目立った。たとえば、外野手の送球が高かったり、挟殺プレーが長引いたりし、走者に無駄な進塁を許していた。1死一、三塁での併殺取りこぼしの失点もあった。いずれも、失策は記録されないミスだった。4年連続リーグ最多失策の阪神だが、背後には隠れたミスもある。

 ただ、こうした連係の精度を高めることにこそキャンプで合同練習する意味合いがある。同じチームとはいえ、オフシーズンを経て、久しぶりに顔を合わせるのだ。勘が鈍っているのは当然だろう。チーム、団体として機能していくために、少しずつ息を合わせていくのである。

 そう少しずつだ。7年前に当欄で書いた「1・01の法則」である。1日1%、ほんの少し成長していく。そうすると1年後には1・01の365乗で37・8にもなる。キャンプ期間中の28日間としても1・32まで伸びていることになる。

 今季の阪神は外国人が少し入れ替わったが大型補強もなく、現有戦力の底上げが必須である。各個人が日々1%でも成長できれば、団体としては大きな力となる。

 チーム内には既に「比べるのは(他人でなく)昨日の自分」という姿勢が浸透している。監督・矢野燿大が今年1月に共著で出した『昨日の自分に負けない美学』(フォレスト出版)に<1%変わることから始めよう>とあった。<初めから100%変えようと思うとなかなか苦しい(中略)1人ひとりが1%でいいから変わっていけたらいい。すると、振り返ったときには、その効果は100%を超えている>。

 そんな団体の力が生まれる土壌はあると書いておきたい。先の練習中、ミスの度に選手同士が声を掛け合っていた。高い送球に「もっと低く」、挟殺時の声のタイミングで「ここら辺で」、内外野中継時のカットマンの位置取り……と選手の声が聞こえた。1%が集まる予感がしている。 =敬称略=
 (編集委員)

 ▼筒井外野守備走塁兼分析担当コーチ(ケースノックでノッカー) ちょっとミスも多かった。今の時期しかしっかりできないので、コーチが全部言ってしまうのではなく、選手同士ですり合わせをしました。走者の目線も含めて進塁させないためにはどうするか。今の段階でうまくいかないことは分かっている。今、ミスが出て、修正して本番を迎えたい。それがキャンプ。

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2022年2月11日のニュース