「ナイスピッチ」「ありがとう」センバツ決勝で見た友情…高校野球の良さ再認識

[ 2018年4月7日 10:30 ]

<大阪桐蔭・智弁和歌山>9回2死一塁、智弁和歌山・根来を一塁ゴロに打ち取った大阪桐蔭・根尾(左端)は、ウイニングボールを手に歓喜。この後、智弁和歌山の一塁ランナーコーチ・田中が根尾の帽子を拾って渡した
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 大阪桐蔭が決勝で智弁和歌山を下し、史上3度目の春連覇で幕を閉じた今センバツ。記者は智弁和歌山の野球部に所属していた00年夏以来の全国制覇を見届けようと、母校を現地で観戦した。2―5で惜敗して準優勝に終わったが、決勝の最後の場面で高校生らしい友情あふれる一幕があった。

 大阪桐蔭の二刀流・根尾が、9回2死一塁から智弁和歌山の根来を一ゴロに打ち取り、自らベースカバーに入って試合終了。二塁方向へ大きく駆け抜けた根尾は、自らの帽子が一塁ベース手前で落ちてしまった。その帽子を拾ったのが、智弁和歌山の一塁ランナーコーチを務めていた背番号9の田中勇也外野手(3年)だ。田中は「目の前にあったので」と小走りでその帽子を拾った。根尾も二塁方向からマウンド付近で歓喜の輪をつくる仲間の元へ駆け寄ろうとしたが、田中が帽子を拾ってくれたことに気づいて方向転換。目の前の歓喜の輪には加わらず、田中の方へ帽子を拾ってくれたお礼を言いに行ったのだ。田中が「ナイスピッチ」と声をかけると、根尾は何度も「ありがとう」と繰り返した。

 レギュラー番号の背番号9を背負いながら、今大会は代走や終盤の守備からの途中出場のみに終わった田中。「健闘を称えるために自然に出た行動。最後までスポーツマンシップを貫こうと思った」。敗れた悔しさはもちろんあるが、笑顔で勝者を称えた。一方の根尾も投打で優勝の原動力となる活躍を見せながら、歓喜の瞬間でさえ広い視野で帽子を拾ってもらったお礼を伝えに行った。「マウンドから優勝の景色を見ることができませんでした」と冗談っぽく笑うあたりが、昨春に続く2度目の胴上げ投手となった心のゆとりか。田中も根尾も記者が高3だった00年に生まれたミレニアム世代。いくら年月を重ねても高校野球の変わらない良さを再認識した場面だった。(記者コラム・東尾 洋樹)

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2018年4月7日のニュース