味方が味方をケガさせた?ベネズエラ代表ペレス捕手を襲ったアクシデント…

[ 2017年3月18日 10:00 ]

イタリア代表ドリュー・ビュテラ(下)が本塁に突入、ベネズエラ代表サルバドール・ペレスと交錯(AP)
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 【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】WBCのベネズエラ代表、サルバドール・ペレス捕手(26)は大リーグ・ロイヤルズの主力でもある。2015年のワールドシリーズではMVP。球宴にも4度出場している。そして11日、彼はWBCの1次ラウンド、対イタリア戦で左膝を負傷。骨折やじん帯損傷といった最悪の事態は免れたが、全治まで2〜3週間ほどかかるため代表からは離脱した。

 けがをしたのはイタリア代表のドリュー・ビュテラ(33)が本塁に突入した際にペレスと交錯したため。実はこのビュテラ、ロイヤルズの選手でありペレスの控え捕手でもある。大リーグに戻ればチームメート。ペレスほどの実績はないが、大リーグに7年在籍して362試合に出場しているベテランだ。

 場面は9回裏。ビュテラが生還すればイタリアのサヨナラ勝ちだった。当然、必死で本塁を狙ってきた。そしてクロスプレー。判定はアウトだったが、そこに予期せぬ“フィジカル・コンタクト”が派生してしまった。ペレスはゴールドグラブ賞を4度受賞している捕手。逃げることもできなかったのだろう。タッチしてアウトにはしたが膝に衝撃を受けてしまった。

 NBAでは過去4回得点王になっているウォリアーズのケビン・デュラント(28)が2月28日のウィザーズ戦で背中から倒れ込んできたチームメートのザザ・パチューリア(32)とぶつかって左膝のじん帯を損傷。味方が味方を“削る”という不測の事態に見舞われている。このとき、デュラントのパチューリアに対するコメントというのは表には出てこなかった。無理もない。優勝を目指して必死にプレーしていた時に復帰時期が見えない大きなケガに見舞われたのだからそのショックが大きかったのだろう。

 だがペレスのビュテラへの対応は少し違っていた。AP通信の取材にペレスはこう答えている。

 「彼(ビュテラ)は素晴らしい人間だ。チームでは僕の親友の1人。彼は僕に“すまない”と泣きながら言ってきたけれど、これはこの大会の宿命のようなもの。逆に彼のほうが気の毒に感じた。母国の旗の下でプレーするなら誰でも勝利のためにベストを尽くす。衝突を避けようとしたようだが、スピードが出ていたから仕方がなかったね」

 つまりペレスはケガをしたにもかかわらず、ロイヤルズの同僚を気遣っていたのだ。

 勝ったか負けたか…。スポーツの世界では誰しもそこだけを気にするが、スポーツの本質はそれ以外の部分にもあることをペレスが示した一戦。試合はベネズエラが延長10回でイタリアを11−10で下したが、国境を越えた“友情”に包まれた見応えのある好ゲームだった。(専門委員)

 ◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、佐賀県嬉野町生まれ。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。スーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会に6年連続で出場。

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