イチロー プロ初代打弾 日米24年連続、自身最も遅い139戦目

[ 2016年9月8日 05:30 ]

<マーリンズ・フィリーズ>8回、代打で今季1号となる2ランを放ったイチロー(AP)

ナ・リーグ マーリンズ3―4フィリーズ

(9月6日 マイアミ)
 マーリンズのイチロー外野手(42)は6日(日本時間7日)、フィリーズ戦の8回に代打で右越えに今季1号2ランを放った。オリックス時代のプロ2年目から日米合わせて24年連続(メジャーは16年)となる本塁打を記録。代打本塁打は日米を通じて初めてだった。シーズン139試合目での一発はメジャー16年目で最も遅く、今季メジャー通算3000安打を成し遂げた42歳の安打製造機にとって、待望の初本塁打となった。

 イチローの表情に浮かんでいたのは、安どの笑みだった。数々の記録を歴史に刻んできた男は、今季初本塁打について問われると、自ら注釈を加えた。「代打で(初めてで)しょ。“代打”を付けないと。(ただの今季)初本塁打だったわけではないですからね」。照れ隠ししても、喜びは隠せなかった。

 3点を追う8回無死二塁。前日の対戦で左邪飛に抑えられた右腕ネリスのフォークの残像は脳裏に刻まれていた。86マイル(約138キロ)がストライクゾーンに落ちるのを捉えた打球の速度は、大リーグの計測システム「スタットキャスト」で97マイル(約156キロ)を記録。369フィート(約112メートル)の飛距離で右翼ブルペンに弾んだ。「あれ(本塁打)だけは狙っていなかった。バントも考えたし進塁打も(考えた)。でも、3点差だからどうかなあ、とか。ヒットはもちろん考えるけれど、あれだけは考えていなかった」。日米通算4297安打目にして初の代打弾が生まれるまでの心の動きを、素直に明かした。

 24年間アーチを架け続けた中で最も遅い、チーム139試合目に飛び出した一発。「コローンが1本打っていましたからね。1本は打ちたいなと思っていました。いや、ホッとしましたね。コローンが1で、僕はゼロでしたから」。42歳の現役最年長野手は、43歳の現役最年長投手が5月にメジャー初本塁打を放っていたことを引き合いに出し、笑いを誘った。

 試合前のフリー打撃。今季のイチローは、10年連続200安打を放った頃を思わせる華麗な柵越えショーを展開している。前半戦終了時には、歴代最多762本塁打のバリー・ボンズ打撃コーチが「球宴の本塁打競争にイチローが出れば彼が勝つさ。練習ではいつも誰よりも本塁打を放っている」と太鼓判を押していた。半面、チームの主力選手では薬物規定違反により長期離脱したゴードンを除き、イチローだけ本塁打0だった。「練習であれだけ打っていますからねえ。1本くらい、とは思いますよ」。ここでも本音が口を突いた。

 継続することの大事さ、難しさを誰よりも知る背番号51は「1(本)ですからね。それはちょっと恥ずかしい」と満足感に浸ることはない。10試合ぶりに先発を外れたが、4試合連続安打と好調を維持。それも、衰えぬ力を示す今季初アーチだった。
(マイアミ・笹田 幸嗣通信員)

 ≪メジャー記録は25年連続≫シーズン連続本塁打のプロ野球記録は谷繁元信(元中日)の27。プロ1年目の89年から引退する15年まで記録し、通算229本塁打だった。大リーグでは歴代最多1406盗塁のリッキー・ヘンダーソン(元アスレチックス)が25年連続で記録。こちらも1年目の79年から引退する03年まで打ち続け、通算297本塁打。日米通算232発のイチローを含めた3人とも本塁打王のタイトルを獲ったことはない。

 ≪日本では代打で27の6≫イチローの代打での成績は、オリックス時代は27打席で27打数6安打(打率.222)、1打点。メジャーではこの日が通算150打席目で、133打数34安打(打率.256)、1本塁打、9打点となった。

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