【石井一久クロスファイア】“伸びしろ”使わず100勝、岸はこれから面白い

[ 2016年8月24日 10:01 ]

<オ・西>6回3失点で今季7勝目を挙げた岸

 西武の岸が、前回16日のソフトバンク戦でプロ10年目にして通算100勝に到達した。驚くような速いペースではないが、昨年、今年と故障に苦しみながらも順調に勝ち星を積み上げてきた。

 勝率・612は、100勝以上の現役投手では、(1)和田(ソ)・649(2)杉内(巨)・648(3)松坂(ソ)・643(4)金子(オ)・628に次ぐ5番目。堂々エースの数字だ。

 僕が西武に移籍した08年、岸は入団2年目。ルーキー年から2桁勝利を挙げていたが、当時の印象は、相手のエースと投げ合っても勝つことができる「究極の2番手」だった。僕が思うエースの条件は、(1)球が速い(2)空振りを取れる絶対的な球種がある(3)長いイニングを投げることができる――の3つ。岸の場合、(2)は決め球のカーブがあり、チェンジアップもいい。(3)についても細身の体だが、タフでスタミナも十分ある。ただ、直球の球速、球威という点においてはエースとしてはやや物足りなかった。

 しかし、一昨年ぐらいから明らかに直球の質が変わってきた。球速も140キロ台後半が常時出るようになった。元々、身体能力は高く、走ることに関しては西武では野手よりも速い。以前は与えられたトレーニングメニューをこなす感じだったが、数年前から自分でトレーニング方法を研究。時には人に聞いたりして、投手の体のつくり方というものが分かってきた。その成果がボールにはっきりと出ている。

 年齢は31歳。プロ野球選手としてはちょうど折り返し点ぐらいかだが、岸の場合は「伸びしろ」をほとんど使わないで100勝に到達した。その意味ではこれからが面白い投手とも言える。

 岸は見た感じの通り、おっとりした性格で、登板前のクラブハウスでも周りが「大丈夫か?」と思うぐらい、飄々(ひょうひょう)としている。それが、ボールを握った瞬間にスイッチが入り、「投手の顔」になる。これからもマウンドで自分を表現し、長く野球を続けてほしい。(本紙評論家)

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2016年8月24日のニュース