ピート・ローズ氏、イチローは「大好き」でも…

[ 2010年9月25日 06:00 ]

 【イチロー10年連続200安打】通算4256安打の大リーグ記録を持つ元レッズのピート・ローズ氏(69)が、シーズン200安打の達成回数でイチローに並ばれた心境をスポニチ本紙に語った。同氏は89年に野球賭博にかかわったとして永久追放処分を受けているが、野球への情熱は今も薄らいでいない。史上最高のヒットメーカーは、日本が誇る安打製造をどう見ているのか。

 まずは聞いてほしい。私は198安打のシーズンが72年と78年の2度あった。そのうち72年はロックアウト(※注1)でシーズンが13日間キャンセルされ、試合も8試合減った。加えて81年は、ストライキで2カ月間中断した。私は107試合で140本打ったが、この年もストライキがなければ、225本前後打っていた。だから12度、ないしは13度200安打をマークできていたはずだ。しかし、現実にはそうはならなかった。来年イチローに抜かれたら、私の記録は大リーグ記録ではなく、ナ・リーグ記録になってしまう。それは寂しい。
 200安打を10シーズン打つには、いくつかの条件がある。大きなケガがないこと。スランプも少ないこと。そして打席にたくさん立つこと。私も1番を打つことが多かったが、6、7番では到底無理な記録だ。
 イチローが1としては四球が少ないことを批判的に言う人もいるが、私はそうは思わない。彼はヨギ・ベラ(※注2)やロベルト・クレメンテ(※注3)がそうだったように「BAD BALL HITTER(悪球打ち)」。それであれだけの結果を残せているのだから構わない。バットに当てた方がヒットも増えるしね。
 この前、あるチームの試合をテレビで見ていたら、打率2割ちょっとで、200三振近くしているのに、30本塁打以上打って試合に出ている選手がいた。最近は狭い球場が多いし、ホームランを打つ選手の方が給料が高いので、こういう選手が増えている。イチローはホームランは少ないが、守備でも走塁でも打撃でもいろんなことができる。タイ・カッブ(※注4)もそういう選手だった。イチローが引退する時は私のようにホームラン、三塁打、二塁打、すべてで通算100本を越えるだろう。今の時代、こういう選手をもっとリスペクトしなければならない。
 私はイチローのプレーが大好きだが、日米合わせた通算記録は認めない。日本の野球を悪く言うつもりはないが、私が一体、何人のサイ・ヤング賞投手と対戦してきたと思うのか。私は日本にも何回か行ったし、王(貞治)さんはメジャーでもオールスターに選ばれる打者だと思った。金田(正一)も素晴らしい投手だ。でも、日本のプロ野球とMLBは同じではない。

 ※注1=労使交渉の紛糾によるオーナー側の施設封鎖。
 ※注2=ヤンキース一筋18年。通算2150安打。捕手としてリーグ優勝14度、ワールドシリーズ制覇10度。72年殿堂入り。
 ※注3=プエルトリコの英雄。パイレーツ一筋で通算3000安打。72年にニカラグア大地震の救済に向かう途中に飛行機事故で死亡。それ以来、最も社会に貢献した選手に「クレメンテ賞」が贈られている。73年殿堂入り。
 ※注4=近代野球草創期にタイガースで活躍した「球聖」。生涯打率・367は大リーグ記録。首位打者12度、歴代2位の通算4191安打。36年殿堂入り。

 ≪ピート・ローズという男≫ピート・ローズ氏は、4256安打、3562試合出場などの大リーグ通算最多記録を持ち「安打王」として名をはせた。1970年代にレッズの強力打線「ビッグレッドマシン」の1番打者としてワールドシリーズに4度出場し、2度制覇。フィリーズ移籍後の80年にも世界一を経験した。スイッチヒッターで、打席から本塁にかぶさるようにかがみ込む独特のフォームで広角に打ち分け、二塁打は歴代2位の746本。ヘッドスライディングなど闘志むき出しのプレーでもファンを魅了し、70年にはオールスター戦にもかかわらず、本塁上で体当たりを敢行して相手捕手を骨折させたこともある。選手兼監督を経て6年間レッズの指揮を執ったが、89年に野球賭博への関与で永久追放処分を受けた。そのため69歳になった今も殿堂入りはしていない。

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2010年9月25日のニュース