雑念振り払ったイチロー 盟友にささげるV打

[ 2010年6月3日 17:41 ]

ツインズ戦で、この日引退を発表したグリフィーの写真を掲げながらイチローに声援を送るマリナーズファン

 【マリナーズ2―1ツインズ】二遊間へのゴロを二塁手が必死で止め、遊撃手に転送した。だが二塁塁審は大きく両手を広げる。その間に一気に勝利のランナーが生還した。

 イチローは「去年の春(第2回WBC)の最後の打席は、僕の野球人生で最も雑念の多かった打席と言いましたが、その次に雑念の多い打席と言えるでしょう」と正直に心の乱れを認めた。延長10回2死一、二塁で放った内野安打は、揺れ動く気持ちと戦いながらの一打だった。

 試合前、ワカマツ監督が選手にグリフィーの引退を伝えた。ただ一人のあこがれの人であり、深く心を通わせる友人。「あまりにも突然すぎて(気持ちの)整理もできないまま、混乱した状態でゲームしていました」

 約3年ぶりで1試合3三振を喫した。殊勲の打席もタイミングは合わず、2ストライク2ボール。ここから6球連続のファウルで粘った数分間も、グリフィーの笑顔が何度も頭の中をよぎった。

 左腕ミハレスの外角スライダーを何とかセンター方向に返した。二塁後方には球場整備員が感謝を込め、砂に描いたグリフィーの背番号「24」。イチローは神妙に「本当はあの24を抜けていってほしかったけど、それでも最後にあの24のところに飛んでいったから」と言った。かけがえのない存在にはなむけのタイムリー。生涯忘れられない一本に違いない。(共同)

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2010年6月3日のニュース