安青錦 下の名前もらった恩人に恩返し「日本語も分からない状態で一緒にいてくれた」

[ 2025年11月24日 04:44 ]

大相撲九州場所 千秋楽 ( 2025年11月23日    福岡国際センター )

銀杯を手にする安青錦(右は安治川親方)(撮影・岡田 丈靖)
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 【ウクライナから来た新大関(1)】戦禍の母国から単身日本に渡った青年が大相撲の世界で夢をかなえた。「ウクライナから来た新大関」では、入門から約2年半で新大関への昇進を確実にした安青錦の偉業を関係者らの証言などで3回にわたって紹介する。

 安青錦の相撲との出合いは偶然だった。柔道を習っていた6歳の頃、先輩が稽古終わりに相撲を始めた。勝負がつくのが早くルールが分かりやすい。すぐにとりこになった。後に02年秋場所での貴乃花と朝青龍の伝説の名勝負の映像を目にした。7場所連続全休明けで引退危機の貴乃花が新大関・朝青龍を上手投げでひっくり返す姿に心を打たれた。安青錦は「いつか自分も」と強烈に憧れた。

 19年に初来日。堺市での世界選手権に出場するためだった。当時、関大相撲部の主将で現コーチの山中新大さんから「ハロー、強いね。何歳?」と声をかけられた。「15歳」と返し、その場で互いにSNSをフォロー、交流を始めた。22年2月、母国がロシアの侵攻を受けると「避難できますか?」とメッセージを送った。徴兵対象で原則出国が認められなくなる18歳の誕生日は目前だった。山中さんは自宅に下宿できるよう両親を説得。練習生として関大の稽古場も使えるように手配してくれた。

 山中さんとともに22年の名古屋場所を初観戦。安青錦は若隆景の名前入りタオルを振っていた。小柄で前傾姿勢の取り口は共通点も、見習うべき点も多い。入門後も若隆景は良き兄貴分として目標になった。今場所5日目の対戦で敗れると、安青錦はすぐに自身の下を向く立ち合いを反省。あの一番が優勝への原動力にもなった。

 しこ名の下の名前は山中さんからもらった。「来た時は日本語も分からない状態で一緒にいてくれた。本当に感謝しかない」と話す。大関昇進は最高の恩返しになった。

 ☆本名 ダニーロ・ヤブグシシン。

 ☆生年月日 2004年(平16)3月23日生まれ、ウクライナ・ビンニツァ出身の21歳。

 ☆スポーツ歴 8歳からレスリング。相撲も7歳から始め、19年世界ジュニア中量級3位。得意は押し、右四つ、寄り。

 ☆初土俵 報徳学園の福田監督から安治川親方(元関脇・安美錦)を紹介され、22年12月に入門。研修期間を経て23年秋場所で初土俵。

 ☆しこ名 師匠の「安」と「錦」、「青」はウクライナ国旗から。

 ☆連続2桁勝利 新入幕から5場所連続の2桁勝利は歴代最長。

 ☆家族 ドイツのデュッセルドルフでクリーニング店を経営する父・セルゲイさん、母・スベトラーザさんと兄。

 ☆趣味 サウナ。好きな漫画は「はじめの一歩」。

 ☆語学力 日本語、ロシア語に加え、英語を少し。日本語の習得は周囲も感心するほど早い。

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