【玉ノ井親方 視点】豊昇龍は足が付いていかなかった 優勝争いは全く分からなくなった

[ 2022年11月24日 19:58 ]

大相撲九州場所12日目   ●豊昇龍(はたき込み)王鵬○ ( 2022年11月24日    福岡国際センター )

<大相撲九州場所12日目>豊昇龍(左)をはたきこみで破る王鵬 (撮影・成瀬 徹)
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 これが相撲の面白さだろう。1敗で優勝争いをリードしていた豊昇龍が平幕の王鵬に敗れ、賜杯の行方は全く分からない状況になった。

 2人は18年初場所が初土俵の同期生。これが幕内での初顔合わせだったが、取組前は幕内での経験も、番付もずっと先を行く豊昇龍を有利と見る向きが多かったと思う。しかし、自分もこういう取組を何度も経験をしたことがあるから分かるが、気持ちは追いかける方がはるかに楽だ。ましてや豊昇龍は初優勝が目の前にちらつき始めている。緊張で体が硬くなってもおかしくなかった。

 そのメンタルの違いを象徴していたのが立ち合いの当たり。王鵬は頭から思い切り当たって相手を押し込み、さらにもう一度頭で当たって前に出た。豊昇龍も当たり自体は悪くなかったが、王鵬がいなすようにして左に回り込んだときに一気に前に出ようとしたところで、足がついていかずにはたき込まれた。

 気が焦ったわけではないだろうが、王鵬の体の柔らかさに前に出る力が吸い込まれてしまったようだった。

 王鵬ははたいて勝ったが、まともに引いたわけではない。流れの中での引き。何より立ち合いからの当たりが良かったからこそ、引き技も効いた。取組後に本人が「完璧な立ち合いだった」と言っていたように、大一番でこういう立ち合いができたことは、大きな自信になったはずだ。(元大関・栃東)

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2022年11月24日のニュース