五輪総括 重圧に打ち勝ったエースの経験 いかに後進育成に活かすかが今後の課題

[ 2022年2月21日 05:30 ]

北京五輪で獲得した4個のメダルを手に笑顔の高木美帆(撮影・小海途 良幹)
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 【五輪総括】日本は金3個を含む18個(銀6、銅9)のメダルを手にした。18年平昌五輪の13個(金4、銀5、銅4)を上回る冬季五輪の最多を更新。夏季五輪最多58個(金27、銀14、銅17)を量産した昨夏の東京五輪に続くメダルラッシュに沸き、26年ミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪へ飛躍のバトンをつないだ。

 各競技のエースがフル回転した大会だった。スピードスケートでは高木美が金1、銀3で日本勢の一大会最多メダル数を更新。スキージャンプの小林陵は金1、銀1、複合の渡部暁も銅2を手にした。スノーボードに初の金をもたらしたハーフパイプの平野歩ら本命選手が期待通りの活躍。この4選手で総数の半数の9個を量産した。重圧に打ち勝って表彰台に立った姿は称賛に値する。

 東京五輪に向けての国の支援態勢の充実も大きかった。合宿や国際大会派遣などに使われる競技力向上事業の予算は、2015年の74億円から21年度は103億円に増加。スポーツ庁の「夏冬一体」の方針で、冬季競技も恩恵を受けた。

 一方で新戦力の台頭は少なかった。フィギュア銀の18歳・鍵山、スノーボード・ビッグエア銅の17歳・村瀬、スピードスケート男子3大会ぶりメダルとなった21歳・森重が躍動したが、初出場で表彰台に上がったのは、この3選手だけ。半世紀以上メダルのないアルペン、98年長野五輪以来の表彰台を目指したショートトラックは見せ場がなかった。

 世界の頂点を知るエースの経験を、いかに後進の育成に生かすかが今後の課題となる。スピードスケートは惨敗した14年ソチ五輪後にナショナルチーム(NT)を発足させ、年間300日以上の合宿を実施。18年平昌五輪(金3、銀2、銅1)に続き今回もメダル量産(金1、銀3、銅1)に成功した。継続した強化に各連盟の施策は欠かせない。

 五輪の醍醐味(だいごみ)はメダルだけではない。ジャンプ複合団体でスーツ規定違反で1本目失格となった高梨の魂の2本目。スノーボード・ビッグエアで大技に挑んで失敗した岩渕が海外のライバルから称えられた光景。スピードスケートの高木菜の連覇を狙った2種目での転倒。今大会も数々のドラマが生まれた。大会中に五輪公式紙の1面を飾った日本人はクワッドアクセル(4回転半)に挑んだフィギュアの羽生、ただ一人だった。

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2022年2月21日のニュース