【ラグビー日本代表2021秋の陣《4》】必然の新主将ピーター・ラブスカフニが投影する映画のヒーロー

[ 2021年10月3日 18:40 ]

日本代表の主将に就任したラブスカフニ
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 チームのオフィシャルフォトグラファーのSNSに先日、きれいに畳まれたジャージーなどのキットの写真がアップされた。宮崎合宿で屋外での本格的な練習が始まる前の、日本代表のポートレート撮影の際の一コマ。撮影を終え、着ていたものをきれいに畳んで整える。誰も見ていなくても、当たり前のことを当たり前にする。そんな振る舞いが心に響いたらしい。

 ピーター・ラブスカフニ(32=クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)が日本代表の新たな主将に任命された。W杯2大会で主将を務めたリーチ・マイケルをその任から解くのは、ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチにとっては大きな決断だったに違いない。しかし後任は、ほとんど迷うことなく決められたのではないだろうか。当たり前のことを当たり前にする。それはポジション柄、“下働き”が多いラグビーでも、一切手を抜かない献身ぶりに通じる。

 南アフリカ出身で16年に来日。初キャップを獲得したのは19年W杯直前のフィジー戦だったが、この試合でも不在のリーチに代わりゲーム主将を務めた。この時もジョセフHCは「ラピースが主将を務めるのは必然」と言った。プレーでは強じんなフィジカルを生かしたハードなプレー、特にディフェンス時のボールへの働きかけが光る。W杯でも不調のリーチに代わってアイルランド戦、サモア戦とゲーム主将を務めた。この後に控えるテストマッチ4戦へスムーズなバトンタッチを実現するには、必然の人事だった。

 ジョセフHCは「ラピースはナチュラルリーダーだ」とも評価する。新主将が発表される2週間前、その後の人事を知ってか知らずか、ラブスカフニ自身は23年W杯に向けて「チームは同じ場所にとどまっていてはいけない。どんなプレーをしたいか、考えて成長しないといけない」と指摘した。そして「50:22」キックなどの新ルール導入によって「一番大きな変化はボールインプレーが長くなることではないか。自陣からのアタックでスペースも生まれる。ディフェンス側はよりコネクションを保って守らないといけなくなる」などとスラスラと答えた。リーダーとして、プレーヤーとしての自覚が発言にもにじみ出る。

 好きな映画は09年に米国で制作された「Gifted Hands」(邦題:奇跡の手)だ。貧困層に生まれながら、様々な試練を乗り越えて医師になった実在の人物の半生が描かれている。「人生にはたくさんの可能性がある。熱心に追い続けることで実現する」。20代後半で母国を飛び出して異国にチャンスを求め、30歳で夢の舞台に立った。ラブスカフニもまた、まだ誰にも語っていない試練を乗り越えてきたからこそ、今のポジションがある。映画になりそうな半生は、この秋からクライマックスへと登り詰めていくはずだ。

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2021年10月3日のニュース