さらば“琴バウアー” 琴奨菊 引退へ「探究できる体でなければ、もう意味がない」

[ 2020年11月15日 05:30 ]

大相撲11月場所7日目 ( 2020年11月14日    両国国技館 )

6日目に最後のバウアーを見せた琴奨菊
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 大関を通算32場所務めた十両・琴奨菊(36)が現役引退の意向を固めた。関係者が明かした。この日は土俵には上がらず不戦敗。15日にも臨時理事会で引退と年寄「秀ノ山」襲名が承認される。秋場所で左ふくらはぎの肉離れを負い、今場所は05年春場所以来15年ぶりに十両転落。本来の力強い相撲が戻らず、6日目まで1勝5敗と精彩を欠いていた。

 先場所痛めた左ふくらはぎが、琴奨菊の致命傷となった。2勝にとどまり十両転落。実績を考えれば、そのまま引退という選択肢もあったが「悔いを残したくない。ケガに負けて引退というのは嫌」と現役続行を決断していた。これまでは膝や大胸筋のケガを克服できた。だが、36歳の肉体は簡単に回復しなかった。悔いは残るが「今の自分が相撲を取る目的は延命ではないから。探究できる体でなければ、もう意味がない」と潔く決断した。

 高知・明徳義塾高から佐渡ケ嶽部屋に入門し、02年初場所で初土俵を踏んだ。強くなったのは、飽くなき探究心があったからだ。11年秋場所後の大関昇進伝達式の口上で用いた「万里一空」は宮本武蔵の五輪書から引用したもので「目指す先は一つであり、目標を見失わずに努力すること」と解釈した。鉄球に取っ手のついた「ケトルベル」を用いたトレーニングを取り入れたり、千葉競輪場での自転車トレーニングなども行ったりした。目標に向かって努力する姿は、佐渡ケ嶽部屋の力士だけでなく、角界全体の見本でもあった。

 相撲人生のハイライトは16年初場所だ。鶴竜、白鵬、日馬富士のモンゴル出身横綱を3連破して、日本出身力士では06年初場所の栃東以来、10年ぶりの優勝を果たした。新入幕から66場所での優勝は当時2位のスロー記録だった。

 故障により17年初場所で大関からの陥落が決まった。だが、その後も金星3個を挙げるなど奮闘を続けた。最後の仕切りの前に上体を反る「琴バウアー」もファンを喜ばせた。平成の大相撲を沸かせた名力士が、また一人土俵を去る。

 ◆琴奨菊 和弘(ことしょうぎく・かずひろ)本名・菊次一弘(きくつぎ・かずひろ)。1984年(昭59)1月30日生まれ、福岡県柳川市出身の36歳。小学3年の時に相撲を始め、高知の明徳義塾中・高に進学。国体など高校7冠で佐渡ケ嶽部屋に入門。02年初場所で初土俵を踏んだ。05年初場所新入幕。11年秋場所後に大関昇進を決めた。16年初場所で初優勝。17年春場所で関脇に転落した。優勝1回。殊勲賞3回、技能賞4回。得意は左四つ、寄り。1メートル81、186キロ。

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