神戸製鋼・谷口到 天国の平尾さんへ連覇誓う「胸を張って報告したい」

[ 2020年10月20日 05:30 ]

神戸製鋼の谷口到

 ラグビー元日本代表監督の平尾誠二さんが2016年10月20日に胆管細胞がんのために53歳で他界し、きょうで4年になる。公私で交流があった日本代表10キャップで11年W杯に出場した神戸製鋼のロック・フランカー谷口到(36)は、天国に「連覇」を報告することを誓った。トップリーグは来年1月16日に開幕する。

 生前の平尾さんから何度も聞かされた言葉がある。谷口は懐かしむ。「連覇は難しいって、よく言われました」。まじめな席でも、お酒の席でもV7の重圧を耳にした。昨季はコロナ禍で打ち切られ、連覇への挑戦は今季に持ち越された。没後4年、改めて誓った。

 「コロナを挟んだので難しいシーズンになると思うけど、連覇を達成して胸を張って平尾さんに報告したい」

 筑波大では選手生命を脅かす故障と、やんちゃな面もあって3年から練習から遠ざかった。「そんな僕をスカウトしてくれた」。じきじきにもらった言葉は今も大切にしている。

 「理不尽の中に身を置くことが一番、人間を育てるんや。理不尽に勝て――と。その言葉はずっと僕の中にある」

 入社後は毎年、契約交渉の席で膝をつき合わせた。粘って給料アップを訴えたが、切れ者に要求を通すのは難しかった。「でも、まとまると、あの“カッカッカ”っていう笑い方で、お前と話すとホンマに長くなるわーて」。公の顔は厳格でも、プライベートになれば人情家。食事によく連れられたのは、“差額”の埋め合わせだったのかもしれない。

 亡くなる16年も5回ほど交渉で顔を合わせた。会う度にやせていった。夏前に突然かかってきた電話で「家族を大事にしろよ」と言われた。それが最後のメッセージだった。

 15季ぶりに日本一になった2季前、優勝を告げる笛をピッチで聞いた。「平尾さんの顔がバンと浮かんで、涙が出た。僕はめったに泣かないんですけど」。11年W杯出場の実力者も36歳。もう一度、あの感動を味わうことが、天国のミスターラグビーを喜ばせることになる。

 ◆谷口 到(たにぐち・いたる) 1984年(昭59)10月1日生まれ、茨城県那珂市出身の36歳。茨城・茗渓学園高―筑波大―神戸製鋼。運動能力が高く、ロック、フランカー、ナンバー8をこなす。神戸製鋼ではこれまで136試合に出場。日本代表では11年W杯に3試合出場した。1メートル88、105キロ。

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