“スポーツ推薦の是非”に再び関心の目 コロナ禍の今だからこそ大事にしたい多角的判断

[ 2020年5月29日 09:15 ]

中大の20年度スポーツ推薦入学試験の要項
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 部活動を強くするため、スポーツ推薦で生徒を獲得する。全国区で名前を売ることができれば、出願人数の増加も期待できる。近年はすっかりおなじみとなった学校経営の戦略の一つだろう。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、スポーツ推薦の選考基準となる全国大会が相次いで中止となった。これまでも、スポーツ推薦の是非は議論されてきたが、再び関心の目が向けられている。

 「学生の本分は勉強である」。一般的に学校とは、社会に出るまでの準備期間として教育を施す場だ。学業以外で過剰に生徒を確保することは批判の対象となるケースもあり、学校のブランド価値を落としかねないリスクもある。有名私立校と言われる学校は全国区とも言えるが、今でもスポーツ推薦制度を続けている学校も多い。なぜか。

 大学サッカー界の名門・明大の栗田大輔監督(49)は「社会生活とスポーツはイコールなんです」と説明する。指揮官は一般企業に勤務する一方で、母校でサッカーを通じた人間形成をモットーに指導にあたっている。定めた目標に向かって努力することを深く追求することや、控え選手が味わう挫折など、すべてが社会で生きることを知っている。

 「今、社会は多様性の時代。Aという選手が素晴らしくても、一定の資格(学力)が足りなかったら学校に行けないというのは、賢くない」。勉強だけでは得られない経験を持つ学生も、社会で成功する可能性は十分にある。であれば、学業が優れた生徒だけを獲得するのは最善か。卒業生が活躍することで学校にメリットがあるならば、スポーツ推薦の必要性も納得できる。

 当然、スポーツ推薦を大量に採れば学校の価値を下げることになる。そこで一般生徒と混じり合い、社会の多様性も生み出している。「勉強ができるのも一芸。スポーツができるのも一芸。個々それぞれが評価されるのは、あって当然だと思う」と栗田監督は言う。コロナ禍を契機に社会のあり方が問われる今だからこそ、多角的に判断することが大切だと思う。(記者コラム・清藤 駿太)

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2020年5月29日のニュース