台風中止で百家争鳴 WRは順延や代替会場開催の示唆すらすべきではなかった

[ 2019年10月12日 11:07 ]

フランス戦中止を受け、会見に臨むイングランド代表のエディー・ジョーンズ監督
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 台風19号の影響による試合中止は、関係各チームや協会、国際統括団体ワールドラグビー(WR)を巻き込んだ百家争鳴の様相を呈してきている。潜在的に各々の置かれている立場が主張の違いに反映されている面はあるかと思うが、すでに1次リーグ突破を決めていたイングランドのエディー・ジョーンズ監督は「ショウガナイ」と話し、引き分け扱いで1位突破が決まったニュージーランドのスティーブ・ハンセン監督は「安全を第一に考えて正しい判断がなされた」と話した。一方、ニュージーランドに勝てば突破の可能性があったイタリアは、セルジオ・パリセ主将が「台風の季節にやるのは分かっていたこと。プランB(代替策)をつくるべきだった」と発言した。戦わずして敗退。気持ちは痛いほど分かる。

 日本に勝たなければ1次リーグ突破の可能性が開けないスコットランドも、協会やグレゴー・タウンゼンド監督らがさまざまな発言で、WRに対して試合開催へのプレッシャーを掛けている。11日には同協会のマーク・ドッドソンCEOが「開始を24時間遅らせてでもやりたい。会場は浜松でもどこでもやる」などと発言。開催中止の場合は法的措置までちらつかせる事態に、WRも異例の声明を出す事態に至った。

 今回のWRの決定は、事前に取り決めたルールに従ったもので、本来何ら批判を受けるものではない。ルール自体は事前に決定しているもので、WRが声明で発表したように、参加全20チームがサインを交わしている。批判をするのはまだしも、スコットランドのように法的措置をちらつかせるのは行きすぎだろうと感じる。

 一方でWRや大会組織委員会にも、やや隙があった点は否めない。最初に台風19号に関する声明を発表したのが4日前。この中で「悪天候が試合日程に影響を及ぼす可能性が高い場合には緊急的措置を講じる態勢が整っている」としている。その後の取材でも分かったが、この「緊急的措置」が順延開催や代替会場での実施だった。つまり一度定めたルールを、主催者自体が変更の検討をしたことになる。これが参加各国のミスリードを招いたと言える。大会序盤に会場への食品の持ち込みルールを緩和したのは英断だと感じたが、大会の根幹に関わる部分は、変更の示唆すらすべきではなかったと思う。

 天候不良時のルール変更については、4年後に向けては今後議論が尽くされていくだろう。そして、ぶれてはいけないものがあることは、WRにとって大きな教訓になったのではないか。(阿部 令)

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2019年10月12日のニュース