稀勢の里、感謝の引退相撲&断髪式 愚直な男が最後に見せた一筋の涙

[ 2019年9月30日 05:30 ]

断髪式で涙を流す元横綱・稀勢の里の荒磯親方(撮影・西尾 大助)
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 今年初場所限りで引退した第72代横綱・稀勢の里の荒磯親方(33=田子ノ浦部屋)の引退相撲が29日、東京・両国国技館で行われ、超満員の約1万1000人が詰めかけた。最後の横綱土俵入りに続いて行われた断髪式では鶴竜、白鵬の両横綱ら約300人が参加し、師匠の田子ノ浦親方(元幕内・隆の鶴)が止めばさみを入れた。

 愚直に自らが信じた相撲道を突き進んできた男らしい、最後の花道だった。11時の開場前から大勢のファンが並んだ国技館で行われた引退相撲。断髪式が終わると師匠の田子ノ浦親方と四方に頭を下げたが、土俵上でのあいさつはなかった。この日は女性がはさみを入れることはなかった。昔ながらのスタイルを貫き、まげに別れを告げた。

 断髪式ではさまざまな思いが去来していた。父・萩原貞彦さんからはさみを入れられると、涙があふれた。初土俵が1場所違いの豊ノ島、琴奨菊のときにも涙を拭った。「(相撲)教習所のことを思い出してこみ上げるものがあった」。新弟子のころの記憶は今でも鮮明だった。

 現役最後の土俵となった初場所3日目以来、257日ぶりの雲龍型の横綱土俵入りでは、太刀持ちに弟弟子の高安、露払いに松鳳山を従えて登場した。17年1月27日、明治神宮で初めて土俵入りを披露したときと同じ顔ぶれだったが、同じミスをした。せり上がりの後の2度目の四股の際、右手を上げた後に左足を送るのが遅れた。「明治神宮と同じで、初心に戻りました」と苦笑いした。

 断髪を終えてワイルドな髪形となり「さっぱりして軽い感じ」と感想を語った。この日は自らを育ててくれた先代師匠である元横綱・隆の里の誕生日でもあった。今度は自身が指導者として後進を育てていくことになる。「横綱のもとで育って、横綱とはこういうものと聞いて、その経験を多少生かせるものはある。そういうのを教えていくのも務め」。親方になっても愚直に相撲道を追求していく。

 ▼横綱・白鵬 どんどん対戦相手がいなくなっていくのは寂しい。(稀勢の里に63連勝で止められ)あれがあるから今がある。自分たちは十分に戦った。今度は自分たちの弟子同士を戦わせたい。それで相撲道に恩返しできれば。

 ▼大関・高安 自分がこの世界に入って、基本になったのが(兄弟子である)稀勢関。教わったことをしっかり生かして、横綱に向かって精進していきたい。まげはなくなっても、稽古はお願いしたい。

 ▼ダワーニャム・ビャンバドルジ氏(元横綱・日馬富士) お互いに横綱になれて良かった。始まりがあれば終わりがある。これからは親方として相撲界に恩返しをしてほしい。品格のある力士を育ててほしい。

 ◇断髪式主な出席者 衛藤晟一(内閣府特命担当大臣)、細川たかし(歌手)、中畑清(プロ野球DeNA前監督、本紙野球評論家)、河野俊史(スポーツニッポン新聞社社長)、松田丈志(競泳五輪3大会連続メダリスト)、力皇猛(元幕内・力桜、元プロレスラー)、尾崎勇紀(元関脇・隆乃若)、萩原貞彦(荒磯親方の父)、日馬富士公平(第70代横綱)、花田虎上(第66代横綱・若乃花)、石山五郎(第57代横綱・三重ノ海)、白鵬翔(第69代横綱)、鶴竜力三郎(第71代横綱)、芝田山康(第62代横綱・大乃国)=順不同、敬称略=

 ◆記念切手発売 「稀勢の里『土俵人生』引退記念フレーム切手セット」(送料・税込み5500円)が10月7日から郵便局のネットショップで、11月18日からは全国の郵便局(一部簡易郵便局は除く)で申し込み受け付けを開始する。内容はフレーム切手、特製ホルダー、てぬぐい、稀勢の里直筆のファンへの感謝の手紙がセットになっている。

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