【菊谷崇 キャプテン目線】CTB中村&SO田村が変幻チェンジ 攻撃パターンに幅

[ 2019年9月30日 08:43 ]

ラグビーW杯2019 「令和の大金星」 アイルランド戦

アイルランド戦で突進する中村。高い守備力と“臨機応変力”を示した(撮影・久冨木 修) 
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 2011年ラグビーW杯日本代表主将の菊谷崇氏(39)が、日本戦を細かく分析する「キャプテン目線」で、28日のアイルランド戦を振り返った。CTB中村亮土(28=サントリー)の守備力と“臨機応変力”を高評価。プロップ中島イシレリ(30=神戸製鋼)のささいな動きから、選手の心境を読み取るとともに、世界ランキング1位で大会に入った強豪を後半、無得点に抑えた要因を探った。

 アイルランドは序盤、PGを狙わずに攻めてきた。日本は勝てる相手。そう考え、4トライ以上で得られるボーナス点を最初から狙いにきたのだと思う。ニュージーランド代表相手に、その選択はできなかっただろう。

 ラインアウトを簡単に獲得し、モールもしっかり組み、日本に対して意図した攻撃ができていたので、方向性は間違っていない。一方で、PGで徐々に点数を離されることが怖かった日本には、精神的にプラスに働いた。いずれにせよ、よく守った。守り勝つしかないと思っていた。肉体バトルで体力を消耗し、後半にダメージが出ると心配したが、最後までよく粘った。

 アイルランドは前半、キックを軸に2トライを奪った。WTBレメキの上がりが早く、その裏のスペースと、FB山中を狙っていた。日本の研究をしていた。後半は日本が同じ攻めをさせなかった。ボールを保持し、ロシア戦のように簡単にキックで離さなかった。守備も良かった。素早い出足で圧力をかけた分、相手が逃げのキックになり、前半のような有効な形をつくらせなかった。

 個人的なマンオブザマッチはCTB中村亮土。体の強さを生かし、タックル成功11回はバックスで最多だった。攻撃では、SO田村とうまくポジションチェンジをした。外に展開する時は、中村がSO、田村がCTBに入る。田村がSOにいる時は、中村とCTBラファエレが縦に突っ込んだ。このシステムがよく機能した。

 10月5日に戦うサモアは、代表で集まる機会が少なく、W杯大会中に成長するチーム。侮れない。体が強く、守備が大切になる。
 アイルランド戦で興味深い場面があった。終盤、プレーの合間に、途中出場の中島が大型ビジョンに映し出された。カメラに応えるように、胸の桜を指すポーズをしたが、誤って別のロゴがある右胸を指した。本人は苦笑い。場内も一瞬、クスッとした。緊迫の場面で見せた自然な姿を頼もしく感じる。このまま試合を楽しみ、大会を楽しむ姿勢があれば、サモア戦も乗り切れるはずだ。(11年W杯日本代表主将、19年W杯アンバサダー)

 【日本・アイルランド戦VTR】日本は前半5分に敵陣ペナルティーでショットを狙うもSO田村が失敗。13、20分とキックを交えた攻撃でトライを奪われたが、田村の3PGで9―12で折り返した。後半は18分に素早いパス回しから途中出場のWTB福岡が左隅に逆転トライ。その後3点を加えると後半は無失点のままリードを守り切って勝利した。

 ◆菊谷 崇(きくたに・たかし)1980年(昭55)2月24日生まれ、奈良市出身の39歳。フランカー、No・8。御所工(現御所実)―大体大―トヨタ自動車―キヤノン。サラセンズ(英国)でもプレーした。世界規格の突破力、体を張ったプレーで信頼を得た。代表通算32トライは日本歴代3位でフォワードでは最多。11年W杯出場。17年度で引退。日本ラグビー協会リソースコーチ。

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