「奇跡なんかじゃない!」4年前も、そして今回も、必然の勝利

[ 2019年9月30日 10:00 ]

<日本・アイルランド>アイルランドを破りサポーターにあいさつする日本代表フィフティーン(撮影・久冨木 修)
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 「奇跡なんかじゃない!」

 19―12。勝利の余韻が覚めやらぬ中、殊勲の決勝トライを挙げた福岡堅樹が、自身のツイッターでつぶやいた。にじみ出る自負と達成感。よくぞ発信してくれたと思った。

 引き合いに出したのは、もちろん前回大会の南アフリカ戦だろう。あの試合もハードな合宿で追い込み、練りに練った戦術を遂行した上の番狂わせだった。「この勝利は必然ですか、それとも奇跡ですか?」。必然であるとの思いを発してほしくて、試合後のミックスゾーン、五郎丸歩に質問をぶつけたのをはっきり覚えている。すると24得点を叩き出した殊勲のフルバックはこちらが質問を言い終わらないうちに、「いや、必然です。ラグビーに奇跡なんてないです」と言い切った。しめた、と思った。

 だが弊紙15年9月21日付け1面の大見出しは、「エディーの奇跡」。3面の五郎丸の記事の近くには「必然です」との発言を見出しにとってもらったが、その後は「奇跡」の一言が一人歩きしたように思う。弊紙に限らず、世の中全体でそうだった。エディー体制でスポットコーチを務めていたマックス・マニックス氏ですら、自身の制作した映画を「ブライトン・ミラクル」と題した。

 客観的に言って、当時W杯で通算1勝2分け21敗、18戦白星なしの日本が、過去優勝2度の南アフリカに勝つことは、奇跡と呼ばれても致し方ない背景が揃いすぎていた。だが今回は違う。4年前の出来事が日本ラグビーの景色を変え、あらゆる世代の選手の意識とスタンダードを上げた。姫野や流ら、4年前の代表にはいなかった選手たちも、あの大金星が今のレベルに達する大きな要因になったと言っていい。それほど大きな勝利であり、驚きであり衝撃だった。

 W杯前最後の前哨戦だった9月6日の南ア戦前、代表スタッフから何度も何度も、「4年前の話をするのは、もう今回で終わりにしよう」とうながされた。奇跡という表現を含めて、日本のラグビーを新たなステージに持って行きたいという気持ちの表れだった。言葉だけではなく、説得力のある結果も出してくれた今は思う。4年前も、そして今回も、必然の勝利だったと。(阿部 令)

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2019年9月30日のニュース