東京五輪女子マラソンまであと1年 還暦記者がコースを試走も悪戦苦闘 路面温度は46度

[ 2019年8月2日 09:16 ]

浅草・雷門の路面温度
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 東京五輪のマラソンは2020年の8月2日に女子、9日に男子のレースが行われる。スタート時間は暑さを考慮して当初の午前7時から6時に変更。だから少しでも涼しい時間帯に走ることができる…はずではなかったか?

 女子の本番まであと1年と1日に迫った1日。実際の状況を確認するために走ってみた。五輪と同じく午前6時に新国立競技場をスタート。しかし気温はすでに29・4度で湿度は81%だった。周囲の森ではミンミンゼミやアブラゼミに交じって、昔は我が故郷の九州方面を“本拠地”にしていたクマゼミが鳴いている。地球温暖化の象徴?そのシャワシャワという鳴き声から通称「ワシワシ」と呼んでいた黒く、うるさく、大きなセミがわんさかと木々に集まって出迎えてくれた。

 外苑西通りから靖国通りを目指す。東京マラソン同様、五輪コースも「平坦」と言われるのだが、スタートして靖国通りを右折した直後まで、緩やかな上りと下りが2回ずつある。トップランナーであれば往路はとくに何も感じないだろう。しかし60歳を過ぎた老体にはちょいとこたえる。この時点ですでに大汗。まさか最初の給水(しかも250ミリリットル)が2キロ地点になるとは思ってもいなかった。ここは復路になると勝負を決めるヤマ場。ここに至るまで暑さで体力を奪われてしまうと、たぶん優勝候補たちとて確実に苦しむはずだ。

 靖国通りに入って正面から朝日を浴びた。冬ならばありがたいが、夏は「敵」でしかない。出発して30分で気温は31・8度に上昇。ずっとアスファルトやコンクリート、はたまた石畳の上にいたせいもあって、私が携帯していた簡易温度計は常に公式発表される気温よりも少しだけ高い数値を示し続けた。

 7・5キロ地点の神保町で五輪コースは左に折れて淡路町から神田へと向かう。しかしちょっと寄り道をすることにした。午前8時前に31~35キロ地点となる内堀通り、つまり皇居前の状況を見ておきたかったからだ。ここは競歩のコースでもあるのだが、この時間帯に男子のマラソンは先頭グループがこのゾーンを通過していく。女子も午前8時ごろに姿を見せ始めるだろう。と、いうわけで神保町の交差点を直進して皇居を目指した。すると多くのジョガーたちが有名な周回コースを走っていた。

 私の二重橋前(皇居ゾーンの折り返し地点)到着時刻は午前7時半。気温は33・7度に上がり、湿度も65%と決して低くはなかった。走っていると往路も復路も横から日差しを浴びる。なにより道幅が広く、空間的に広いこともあってランナーたちを守ってくれる「日よけ」が皆無。ここは各選手たちが自分の順位やタイム差を確認できるエリアだが、その一方で路面から立ち上ってくる蒸した空気が体を包みこんでしまうので、見た目以上に辛い区間かもしれない。

 競歩男子50キロでは内堀通りにセッティングされた1周2キロのコースを25周もするのだが、私はフィニッシュするすべての選手に敬意を払う。夏季五輪の競歩はどの大会でも過酷なレースになるのだが、東京も例外ではない。天候次第では最も試練を与える大会になりかねないし、その中で最後まで耐え抜いた選手は、順位に関係なく猛暑を制圧した立派なアスリートだ。(病院に搬送される選手がいなければいいが…)。

 寄り道をしたので本コースに戻るのに時間がかかってしまった。神田駅を通過して日本橋方面に向かうと、ちょうど通勤ラッシュの時間帯にはまってしまった。歩道には人があふれて走れない。やむなくコンビニにピットイン。おにぎりと冷たいお茶を飲んでいる間に時間は刻々と経過していった。この日本橋を通過して浅草・雷門前での折り返しまでの間は、東京マラソンの旧コースとほぼ同じだが、実はこの区間は銀座周辺と比べると沿道での「場所取り」が楽だ。

 2013年、私が東京マラソンを初めて走ったときも、応援してくれた仲間たちは東日本橋付近にいて、歩道橋を利用して往路も復路も両方、声をかけてくれた。もしレースが冬ならばここを応援スポットとしておすすめしたいのだが、1日の東京の最高気温は私の温度計(地表1メートル)では35・7度。気象庁の公式発表は35・0度(千代田区)で今年初の猛暑日になっていた。雷門前の路上に温度計を置いてみると、なんと路面の温度は46・8度(地上1センチ)まで上昇。これでは午前中とは言え、うかつに沿道に立っていることはとても危険だ。特殊な遮熱剤を路面に撒布して気温を下げる舗装工事が進んでいると聞いているが、それを走路と沿道のすべてで完了できるのか?夏季五輪のマラソンは人間の英知をふり絞らないと、運営が難しい局面に差し掛かっている。マラソンで酷暑の影響を受けるのは選手だけでなく、観客、さらに選手以上に“現場”にいる時間が長いボランティアの方々。足元で感じた異常なまでの暑さのおかげで、夏季五輪そのものの未来に不安を感じざるをえなかった。

 そして私はコンビニに倒れこむように入り、2度目の休憩。その先もしばらく走ってみたが、そもそも幼いころから長距離が大の苦手だった私にかわせるような暑さではなくなっていた。合計3リットルの水分を補給したものの、スタートから24キロを走ったところでギブアップ。たぶんそれ以上、歯をくいしばっていたらこの原稿を書ける状態ではなくなっていただろう。

 さてこの酷暑のマラソンと競歩を制するのは誰?観戦する方はくれぐれも熱中症対策を忘れずに。新国立競技場でワシワシの鳴き声を聞いたら、気持ちを引き締めておきましょう。

 ◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身、60歳。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。現在スポニチ・アネックスで「スポーツ・イン・USA」のコラムを担当。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には8年連続で出場。53歳で始めたフルマラソンの自己ベストは4時間16分。今年2月の北九州マラソンはもがき苦しんで4時間47分。

 

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