MGC参戦か、世界選手権切符か…川内優輝 決断はびわ湖毎日“公務員ラストラン”の後で

[ 2019年3月6日 09:00 ]

2020 THE PERSON キーパーソンに聞く

川内優輝
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 20年東京五輪のマラソン代表選考会、グランドチャンピオンシップ(MGC、9月15日)まで約半年となり、4月にプロ転向する川内優輝(32=埼玉県庁)の動向に注目が集まっている。今は世界選手権(9月27日開幕、ドーハ)の代表入りが目標だが、MGC参戦の可能性も。公務員ラストマラソン、びわ湖毎日(10日、スポニチ後援)を前に、意気込みや独自の五輪観を熱く語った。 (杉本 亮輔)

 自身92回目の42・195キロは特別なレースとなる。4月にプロ転向する川内にとって、びわ湖毎日は公務員最後のフルマラソン。24日の久喜マラソンは仮装で駆けるため「埼玉県庁」のユニホームは、近江路で見納めだ。

 「テレビに映る舞台ですし、今まで埼玉県庁を凄く応援してもらったので。最後にこのユニホームでいい走りができれば。レースが終わって、ユニホームを脱ぐ時に何を思うかな、と。グッとくるかもしれないですよ」

 今年の最大目標を世界選手権に置く。びわ湖毎日は、同選手権の代表最終選考会。昨年12月の福岡国際で10位に沈んだ川内が選考対象になるには、日本人3位以内か、日本人4〜6位の場合には2時間10分以内が求められる。

 「結果を残さないとドーハに選ばれない。必ず3番以内に入りたい。これまで福岡国際と東京では3番に入っているけど、びわ湖だけ最高が4番ですからね。最低、サブ10(2時間10分切り)はやっておかないと。最後のレースがダメで“落ち目”と言われるのも、しゃくですから!」

 既にMGCの出場権は獲得している。MGCが9月15日、世界選手権の男子マラソンは10月5日。毎週のように駆ける川内ならダブル参戦も可能だが、2大会の出場は日本陸連がNGの方針だ。世界選手権切符を逃した場合、MGCに参戦する可能性がある。

 「ドーハに選ばれる、選ばれないの結果次第でいろいろと考えようと思っています。今はまだMGCのエントリー方法とかが発表されていない。出る場合にはいつまでに登録しろ、とかがあると思うので、その期限までに決めればいいかな」

 暑さに弱い川内は当初、猛暑でのレースとなる東京五輪には関心を示さなかったが、ここに来て少し心が揺れている。五輪本番のスタート時間が招致段階の午前7時半から一時は7時となり、昨年12月には6時となる方針で固まったからだ。

 「東京五輪への思いは、前のままとは言えないですよね。私は何も変わらないのに、開始時間だけがどんどん変わって、都合が良い方向に変わっていっている。元々暑いから戦えないと言っていたのに、どんどん暑くない方向に進んでいる。午前8時すぎのゴールなら、なんとかなるかもしれない」

 日本では、最高峰の舞台は五輪という意見が根強い。だが、これまで独自路線を貫きながら世界選手権やアジア大会で日の丸を背負った川内は、独自の五輪観を持つ。

 「みんな五輪を目指していて、価値があって素晴らしい大会と思いますよ。でも、五輪で戦えないと意味がないんです。戦えない日本代表ってみじめなだけなんですよ!五輪、五輪と言って、五輪が終わったら競技を辞めてしまうのも寂しいですしね」

 昨年は世界最高峰シリーズの「ワールドマラソンメジャーズ」の一角、ボストンで優勝するなど、世界中に出没する川内の視野は広い。

 「マラソンって五輪以外にも世界中にレースがあるんですよ。ケニア、エチオピアでも五輪に出るのは3人で、それ以外はプロランナーとして世界中の賞金レースで戦っている。何百人という人が、五輪とは違う目標を持っている。日本人だって、そういう考えを持っていいと思うんですよね」

 五輪はアスリートの人生を本当に変えるのか。川内の持論は「否」だ。

 「“五輪に出たら人生が変わる”って言う人もいるけど、そういう人に“リオ、ロンドン五輪のマラソン代表の名前を全員言えますか?”って聞くと、言えないんですよ。五輪に出たからといって、名前が知られるほどには人生が変わらないってことですよ。五輪第一主義の先に待っているものは、何なのか。20年以降、日本のマラソンが心配かな、と」

 日本陸連の瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーからは再三、MGCへの出場を促されている。

 「瀬古さんはたぶん、私がMGCに出てくると面白いってだけだと思う。実際、瀬古さんが期待しているランナーは誰か、分かっていますから。ただ、私が瀬古さんに嫌われていないことだけは分かりましたね」

 今後の針路を決めるびわ湖毎日が迫る。フィニッシュの先に待つのは、世界切符か、それともMGCへの闘志か。常識にとらわれない川内なら、MGCではなく国内外を問わず別のレースをターゲットにしても不思議ではない。

 「びわ湖では粘って粘って、競い合って競り勝つ、そういう走りができれば公務員ランナー、市民ランナーとして悔いはない。五輪戦線への参戦は、びわ湖の結果次第ですからっ!」

 誰もが予測不可能な未来だが、断言できることがある。東京五輪代表争いで列島の注目が集まる9月15日。川内は、地球のどこかを駆けている。

 ≪代表発表は5月≫ 東京五輪、世界選手権の枠はともに最大3で、世界選手権の男子代表選考会は昨年8月の北海道、12月の福岡国際、今年2月の別府大分、3月の東京、びわ湖毎日の5大会。(1)各選考会でMGC出場資格(びわ湖は日本人1〜3位で2時間11分以内か2時間10分以内での日本人4〜6位)を満たした選手(2)各選考会で日本人3位以内(3)5月31日の国際連盟世界ランク上位選手の順に、活躍が期待される選手が選ばれる。

 日本陸連はMGCと世界選手権の両方への出場は認めない方針で、有資格者にどちらに出場するかのヒアリングを行った上で代表を5月に発表する予定。世界ランクでの代表入りが出た場合は、さらに発表はずれ込む。

 MGCでは優勝選手が東京五輪の代表に決定。MGC2、3位の選手で派遣設定記録(2時間5分30秒)を17年8月〜19年4月に突破したMGC上位選手、記録突破が不在の場合はMGC2位が代表となる。残り1人は、19年冬〜20年春の大会で派遣設定記録(未定)を突破した最速の選手、突破不在の場合はMGCの2位または3位が代表に決まる。

 ◆川内 優輝(かわうち・ゆうき)1987年(昭62)3月5日、東京都世田谷区生まれの32歳。学習院大時代に関東学連選抜で箱根駅伝に2度出場。4年時の09年2月に別府大分で初マラソンを走り、埼玉県庁に入庁後、公務員ランナーとして世界選手権は11、13、17年と3度出場。14年アジア大会では銅メダルを獲得した。自己ベストは2時間8分14秒。1メートル75、62キロ。

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