鬼気迫った桃田の11連続得点 アジア大会印象に残った戦いから

[ 2018年8月23日 13:02 ]

桃田賢斗(撮影・小海途良幹)
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 鬼気迫るとはこのことだ。ジャカルタ・アジア大会、21日のバドミントン男子団体戦準決勝。インドネシアと対戦した日本は、第1シングルスの桃田賢斗(23=NTT東日本)が驚異的な粘りを見せて逆転勝ちした。

 1―1で迎えた最終ゲームは、ギンティンに8―15と追い込まれた。ここから11連続得点で19―15とし、21―16で勝利した。

 「11連続得点の時は自分が冷静で。相手のコートが広く見えて、声援も聞こえなくて。相手が勝ちを急いでいるのも分かった。落ち着いてラリーをすれば、と思った時から視野が広くなりました」

 それはきっと、集中力が極限まで高まった“ゾーン”の状態。前後左右に振られても、とにかく拾った。ネット際は特に強かった。甘い球を返してこようものなら、スマッシュを叩き込んだ。

 並の選手なら、負けていた。そう感じさせる場面があった。11連続得点の前、6―9でサーブレシーブをネットにかける凡ミスがあった。自嘲気味に天を仰ぐ。気持ちが切れたのでは、と感じさせる落胆が伝わった。実際、この後に8―15と差を広げられた。

 しかし、日本男子初のシングルス世界王者は、浅はかなこちらの展望をあっさり打ち砕いた。前出の通り、試合をひっくり返した。「翌日に試合ができなくなってもいいという気持ちで足を動かしたのが、逆転できた要因」。勝利の瞬間、左手で大きなガッツポーズ。そして、“どうだ”と言わんばかりに、目を見開いて吠えた。苦しい戦いを象徴していた。

 世界ランキングは桃田が4位で、相手は12位。直前の通算成績は桃田の3勝1敗と、違法賭博問題の謹慎から復帰した日本のエースが優勢だった。下馬評を覆す相手の攻勢は、地元インドネシアの声援を抜きして語れない。

 ぎっしり埋まった観衆。得点ごとの盛り上がりはもちろんのこと、ラリーの1球ごとにホームの声援が飛んだ。リズムに乗りやすい環境を作り出していた。桃田の後、日本は3連敗を喫した。日本男子初の決勝を逃したのは、完全アウエーの雰囲気と無縁ではなかった。ここで敗れ、48年ぶり銅メダルが確定した。

 2020年東京五輪を思う。元々強いインドネシアをより強くした地元の後押しがあれば…。いや、違う。期待するのは、そこではない。あの声援、あの逆境を跳ね返した桃田の実力ならば、2年後、日本に熱狂を巻き起こすのではないだろうか。(倉世古 洋平)

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2018年8月23日のニュース