「的外れ」ではないNFLドラフト最後の指名 でも…大丈夫か、ブロンコス?

[ 2017年5月6日 11:30 ]

チャド・ケリー
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 【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】NFLのドラフトは7巡目まで行われるが、最後の指名選手は「ミスター・イレレバント(Irrelevant)」と呼ばれている。「的外れ」あるいは「見当違い」という意味で、この最終指名選手がのちにスター選手なったことは一度もない。そのほとんどがキャンプで脱落していく運命にある。だから期待値はほぼ0の新人なのだ。

 しかし今年は少し状況が違った。ドラフトは4月27日から29日まで行われたが、最後の指名権を持っていたのはブロンコス。そしてかつてスーパーボウルでも活躍した元QBのジョン・エルウェイGM兼副社長(56歳)は迷わず「チャド・ケリー」を選択した。

 ケリーはミシシッピ大に2季在籍したQB。昨季は膝と手首を痛めてほとんどプレーできなかったが、15年シーズンはチームを10勝3敗の好成績に導き、AP2位にランクされていた強豪アラバマ大にも勝利を収めた。

 伯父はかつてエルウェイ氏のライバルとして活躍した元ビルズのQBジム・ケリー氏(57)。スーパーボウルに1991年から4年連続で出場(すべて敗戦)したスター選手の甥っ子で、早い段階から注目を集めていた。

 しかし最初に入学したクレムゾン大では「先発させてもらえないならフットボールをやめてラクロスをやる」とわがままなふるまいをしたために退校処分。その後、ジュニアカレッジで1年プレーしてミシシッピ大に転校したのだが、バーの用心棒とけんかして逮捕されるなど素行の悪さが目立っていた。しかも昨年11月に膝のじん帯と半月板を痛め、NFLの各球団は上位指名を断念。普通に学生生活を送り、ケガさえなければ3巡目以内の指名は確実と言われたのだが、ブロンコスが声をかけるまで、彼は見向きもされなかった。

 AP通信によればエルウェイGMはケリー氏に電話をかけて「どうなんだ?」と甥っ子について尋ねたのだそうだ。これに対してケリー氏は「いいやつだよ」と返答。「自分は彼(ケリー氏)を信頼しているからね」とともに殿堂入りを果たしている大物同士の電話会談で253番目での指名が決まってしまった。

 NFLでは昨季、ドラフト4巡目(全体135番目)でカウボーイズに指名されたQBダク・プレスコット(23)がチームの快進撃(13勝3敗)に貢献して新人王に輝いている。リーグ・トップクラスのQBがいないブロンコスに指名されたことで、本来3巡目までに消えていたはずのケリーが生き残る確率はかなり高い。

 だがなにせ“出世率0%”のミスター的外れ。その称号が今、彼には重くのしかかっている。それとエルウェイ氏の言葉にもひっかかるものがある。自分の子どもや親戚のことを聞かれたとき「あいつは問題があって使えないよ」と切り捨ててしまう人はいないだろう。ケリー氏の評価は“話半分”で聞くべきではなかったか?たぶんブロンコスのファンも私と同じことを考えていると思う。 (専門委員)

 ◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、佐賀県嬉野町生まれ。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。スーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会に6年連続で出場。

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