小平が世界新 日本女子初の総合V「平昌で爆発」

[ 2017年2月28日 05:30 ]

スピードスケート世界スプリント選手権最終日 ( 2017年2月26日    カナダ・カルガリー )

スピードスケートの世界スプリント選手権で日本女子初の総合優勝を決め、表彰式で笑顔の小平奈緒
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 女子の小平奈緒(30=相沢病院)が日本選手では1987年の黒岩彰以来30年ぶりとなる総合優勝を飾った。女子では初めて。最終日は500メートルで36秒80の1位、1000メートルで1分13秒17の3位。両種目とも日本新記録でトップだった第1日と合わせ、4レースのタイムを得点化したポイントで世界新の146・390をマークした。来年2月の平昌(ピョンチャン)五輪での金メダル獲得へ大きな自信をつかんだ。

 最後の1000メートルを終え、電光掲示板で総合優勝を確かめると小平は小さく何度も両拳を握った。全く危なげない滑りを2日間で4本そろえ、日本勢では黒岩彰以来30年ぶりの快挙。ベテランの域に達して飛躍的な進歩を遂げた日本のエースは「スロー再生のような競技人生だけれども着実に一歩を踏んでいる」と喜びをかみしめた。

 総合首位で折り返して迎えた最終日の2レース。前日に日本記録を塗り替えた500メートルは同走の相手が遅く、バックストレートで距離が詰まって減速した。それでも唯一の36秒台で滑り、今季500メートルは出場13戦全勝。「あれがなければ日本記録は超えられたけど冷静に判断できた」と余裕を漂わせる。全4レース制覇が懸かった続く1000メートルは失敗を恐れて力みから3位。完全優勝こそ逃したものの総合成績で従来の世界記録を上回った。それでも、「(五輪種目の)世界記録は出していない。頂点はまだ先」と普段と変わらず満足感に浸ることはなかった。

 探究心が強さの源だ。信州大時代から二人三脚で歩んできた結城匡啓コーチ(51)は当時小平が定期的に提出したリポートに人体の解剖図が描かれ「ここの筋肉を使いたい」などと具体的に書かれてい たと明かす。速くなるためには競技の枠も超えた。上半身の使い方を学ぼうとレスリング女子の吉田沙保里と組み合って練習し、効果的な体幹の動きを知るため競輪場で自転車をこぐなど取り組みは数知れない。昨季まで2シーズンはオランダで単身武者修行もした。

 30歳にして世界一となり、自身をリンゴの木に例えた。「ようやく実がなり始めたところ。熟すにはまだ時間がかかる。興奮するには早い。五輪で爆発させたい」。過去2度の五輪で個人種目は5位が最高。足元を見詰めながら前に進む。

 ▽世界スプリント選手権 単種目でメダルを争う五輪とは違い、500メートルと1000メートルを2日間で各2レース、計4レース滑り、その総合得点で優勝を争う短距離スケーター世界No・1決定戦。500メートルは36秒75なら36・75といった具合に秒数がそのまま得点に反映されるが、1000メートルは秒数の2分の1となる。4レース合計の総合得点が少ない順で順位が決定。70年に第1回大会が行われ、72年から現在の大会名称となった。スプリント選手権での今大会前までの女子世界記録は13年1月にヘザー・リチャードソン(米国)が出した147・735だった。

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2017年2月28日のニュース