近づく日本人初9秒台のXデー、記者はその時…

[ 2016年3月27日 08:26 ]

3月19日、男子60メートル準決勝 力走する桐生祥秀(AP)

 歴史的なスポーツシーンに立ち会える。これぞ記者業の醍醐味だ。夏季五輪でも、冬季五輪でも、日本人金メダリスト誕生を現地で見た。もちろん、それは感動的で美しい光景だった。だが、個人的な衝撃度では日本人戴冠を上回ったレースがある。陸上短距離、ウサイン・ボルトの世界新記録だ。

 08年北京五輪の100メートル9秒69、200メートル19秒30、09年ベルリン世界選手権の100メートル9秒58、200メートル19秒19を競技場で見る幸運に恵まれた。世界新4つのライブ体験は、数少ない自慢でもある。誰だったかは失念したが、隣の男性記者と絶叫しながら、抱き合った記憶がある。

 98年12月13日、伊東浩司が10秒00をマークしてから17年余り。ついに、というか、ようやく、というか日本初の9秒台が今年見られそうだ。3年前に10秒01をマークした桐生祥秀(東洋大)はこの冬、スタートの改善など充実のトレーニングを敢行。今季初戦の世界室内選手権では60メートルの日本記録に0秒01と迫り、上々のスタートを切った。

 桐生は昨年3月28日、米国で開催されたテキサス・リレーの100メートルで、3・3メートルの追い風参考ながら日本で初めて10秒の壁を破る9秒87。その時、フィギュアスケート世界選手権で中国・上海に滞在していた僕は、快走をインターネットで知って、思わず「アイヤ~!」と叫んでいた。

 今年も100メートルの初戦はテキサス・リレー(4月2日)だ。その時、僕もきっと米国にいる。昨年と同じフィギュアスケート世界選手権で、テキサスではなくボストンに。羽生結弦、浅田真央はもちろん気になるが、桐生だって気になる。個人的にはボルト級のインパクトがありそうな日本初の9秒台は現地で見られないが、織田記念国際(4月29日)での凱旋を楽しみに待とう。(杉本亮輔)

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2016年3月27日のニュース