海老沼“人生変えた”一本勝ち!連覇で五輪当確

[ 2012年5月13日 06:00 ]

<男子66キロ級決勝>森下(右)に支え釣り込み足で一本勝ちし、優勝を飾った海老沼

柔道全日本選抜体重別選手権兼ロンドン五輪代表最終選考会第1日

(5月12日 福岡国際センター)
 新旧の世界王者が決勝で激突した男子66キロ級は、現王者の海老沼匡(22=パーク24)が一昨年Vの森下純平(22=筑波大4年)に一本勝ちし、大会連覇を達成するとともに、初の五輪出場を確実にした。92年バルセロナ五輪78キロ級金メダリストの吉田秀彦監督(42)は就任1年目で五輪代表を送り出すことになる。また、この日行われた男女7階級は全て第1シードが優勝し、五輪出場に大きく前進。13日の大会終了後に行われる全日本柔道連盟の強化委員会で、男女14階級の代表が正式決定する。

 試合開始から4分が過ぎて「あの1回だけ自分の組み手になった」チャンスを、海老沼は逃さなかった。フェイントのつもりだったという支え釣り込み足で相手が体勢を崩すと、そのまま上体でキメた。過去2戦2敗だった森下との新旧世界王者対決を、鮮やかな一本で制した22歳は「この大会で(勝てば)人生変わる、と思っていたんで硬くなってしまった」と、笑顔で丸刈り頭をかいた。

 人生が変わる。その重圧が海老沼の動きを鈍くしていた。初戦は有効を先制された。内股で逆転一本勝ちをしたあとの控室。目を覚ましてくれたのは、4月に入社したパーク24の吉田秀彦監督だった。「思い切って技を掛けるのがオマエの良さ。思い切っていけ!!」。柔道私塾・講道学舎と明大の先輩でもある師が、柔道界に復帰したのは昨年5月12日。「負けるのを恐れていた」海老沼は、最高の結果で“1周年”の恩返しをした。

 もう1人の師にも朗報を届けた。昨年8月29日、明大柔道部の藤原敬生監督ががんでの闘病の末に死去(享年52)。金メダルを獲得したパリ世界選手権からの帰国便で訃報を耳にし、絶句した。「藤原先生が“一緒に五輪に行くぞ”と言ってくれていた。亡くなったのは本当につらかったけど、これでいい報告ができる」と唇をかみしめた。

 明大柔道部は不祥事で活動自粛中。母校の道場を使えず出稽古で最終調整を行った海老沼の勝利は、後輩たちへのエールでもある。吉田監督に「安心するな。ここからがスタートだぞ」と声を掛けられた22歳は、汗も拭わずうなずいた。「ここで気持ちを切ったら、代表になっただけの選手。プレッシャーを楽しんで、金メダルを獲りたい」。

 ◆海老沼 匡(えびぬま・まさし)1990年(平2)2月15日生まれ、栃木県出身の22歳。5歳で柔道を始める。世田谷学園から明大を経て今年4月にパーク24入社。世界選手権は10年3回戦敗退、11年優勝。全日本選抜体重別は10年から3連覇。得意技は背負い投げ。1メートル70。

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