遼君賞金王!ウッズも超えた世界の18歳

[ 2009年12月7日 06:00 ]

ゴルフ日本シリーズ・最終日の会場をあとにする石川はクリスマスツリーを手にVサイン

 ハニカミ王子がついにキングに上り詰めた。男子ゴルフの国内ツアー最終戦、日本シリーズJTカップは6日、東京都稲城市の東京よみうりカントリークラブ(7016ヤード、パー70)で最終日が行われ、石川遼(18=パナソニック)は今季ツアー最終戦を通算3オーバーの19位で終えて今季の通算獲得賞金を約1億8352万円とし、国内ツアー史上初の10代での賞金王に輝いた。尾崎将司が1973年にマークした日本ツアー最年少記録の26歳を36年ぶりに更新。米ツアーでのタイガー・ウッズの記録(21歳)も上回る世界最年少の賞金王の誕生となった。

 冬晴れの空に万雷の拍手が響き渡った。ホールアウトした石川は18番グリーンの脇に立ち止まり、真っ赤なハンチング帽を脱いでギャラリーに一礼した。最終戦で優勝争いに絡むことはできなかったが、それは大きな問題ではない。王子と呼ばれた男の戴冠式では、世界最年少賞金王の誕生をすべての人が祝福した。
 「もう感無量です。あれだけ大きな拍手をもらえるとは思わなくて、かなりこみ上げてくるものがあった。何カ月も前から賞金王の可能性があると言われてて、どこかで意識していたのかもしれない。今までの最年少優勝とかより実感があって、重みを感じます」
 日本を飛び出してアジア、米国、欧州まで股に掛けて活躍した1年。特に最終戦までは17週連続出場という強行日程だったが、気持ちが切れることはなかった。その原動力となったのは夢舞台での苦い経験だった。
 4月のマスターズ。特別招待を受けて挑んだ石川はカットラインに5打届かず予選落ちした。直前に始めたスイング改造で頭が混乱し、本来の実力を出し切れなかった。米メディアから「注目されているのはパパラッチによるもの」などと揶揄(やゆ)され、より悔しさは増した。そして「まだまだ練習量が足りない」と何よりも自分の甘さを痛感させられた。
 「出られるだけで満足だと思ってたのに、物凄く悔しかった。それが今週まで続いてたから、ここまで練習をしてこられた。あの悔しい思いは来年のマスターズに行くまでずっと続くと思う」
 マスターズが終わると試合の様子を収めたノーカット版のDVDを関係者から受け取った。通学の時や会場へ向かう車中で、その映像を何度も見返した。そのたびによみがえる悔しさを胸に焼きつけ、クラブを振り続ける力に変えた。
 それまでトレーニングをする日にはショット練習をしないこともあったが、毎日のように球を打ち込むようになった。練習ラウンドではグリーン周りのアプローチなどに時間を費やすようにもなった。妥協を許さないゴルフへの取り組みは、いつの間にか賞金王へ続く道となっていた。
 小学生の頃、石川は自分がツアーで片山晋呉や伊澤利光と戦うマンガを描いていたという。最終ホールを迎えて2打差、3打差のビハインド。でも、いつも逆転で優勝をもぎ取る。そんな空想の世界でも賞金王は思い描けなかった。「こうだったら凄いよなというのをマンガに描くけど、18歳での賞金王というのは想像してなかった。本当に夢のまた夢ですよね」。少年時代の空想さえ飛び越えて、世界のゴルフ界に刻んだ新たな歴史。そして、石川の紡ぎ出す夢のような物語は来年のマスターズへ、そしてその先の未来まで続いていく。

続きを表示

2009年12月7日のニュース