古賀、絶対に怒らない師の言葉で一変「走るべき道見えた」

[ 2009年7月29日 09:04 ]

 【世界水泳】世界一になっても、感情を爆発させはしなかった。「不思議だった。夢で見たような結果が目の前にあるから…」。古賀は感慨に浸りながら、隣を泳いだ入江陵介選手(19)に握手を求め、静かにプールから上がった。一度は競技への情熱を失いかけた男が、生まれ変わって頂点に駆け上がった。

 水泳界の誰もが「抜群」と認める素質を持ちながら、生かし切れなかった。練習嫌いだった古賀を変えたきっかけが、二つある。
 昨年の北京五輪出場を逃し、失意のあまりに髪を赤く染め、耳にピアスの穴をあけた。ある日、北島康介(26)らトップ選手を治療した経験を持ち、体のケアを頼んでいる鍼灸師の白石宏氏(53)にこう言われた。「なんでやろ。こんなんじゃ何をやっても駄目だ」
 信頼する白石氏の寂しそうなひと言が胸に響き「普段の生活態度から変わった」と、前向きさを取り戻した。「絶対に怒らないわたしが、がっかりしたように言ったことがこたえたんでしょう」と白石氏。練習に取り組む姿勢が一変した古賀は「自分の走るべき道がはっきりと見えた」と振り返った。
 昨冬から空手を習い始めたことも精神面を成長させた。武道を学んだことで「気持ちが高ぶるのを抑えられるようになった」。ゴール後に派手に喜ばなかったのは、相手を思いやる武道の心から。「競ってくれる相手がいてこそのレース。周りに不愉快な思いをさせたくない」という。
 表彰式。金色に輝くメダルを受け取っても、大げさに自分を誇示したりはしない。観客に向かってぺこりと頭を下げた。

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2009年7月29日のニュース