アラフォー岡部「やった!」W杯最年長V

[ 2009年3月12日 06:00 ]

W杯ジャンプで優勝し、笑顔の岡部孝信

 スキージャンプW杯個人戦は10日、フィンランド・クオピオで行われ、38歳4カ月の岡部孝信(雪印)が1回目4位から逆転し、ジャンプのW杯史上最年長優勝を果たした。これまでは04年2月の葛西紀明(36=土屋ホーム)の31歳8カ月が最年長だった。岡部のW杯制覇は長野五輪直後の98年3月以来、11季ぶりで通算5勝目。4度目の五輪出場を目指すベテランがプレシーズン終了間際に大きな一歩をしるした。また、葛西は5位、湯本史寿(24=東京美装)も7位と健闘した。

 優勝が決まった瞬間「やった!」と大声で叫んでいた。両手に持ったスキーを岡部が突き上げると、チームメートが一斉に駆け寄った。38歳4カ月での優勝。史上最年長Vに敬意を表し、02年ソルトレークシティー五輪2冠のアマン(スイス)が岡部との記念撮影をせがみ、他の選手も握手を求めた。「まさか優勝できるとは…。うれしい」。ベテランの顔は、祝福されるたびにくしゃくしゃにゆがんだ。
 W杯転戦選手の中で最年長の岡部は、助走速度が低く抑えられ、風も不安定だった条件下で冷静だった。4位で迎えた2回目。「練習でいいジャンプができている。自分の飛躍をすればいい」と集中すると、K点をきっちり越えた。1回目上位の3人は次々と失速。「我慢することが大事」というベテランのしぶとさが、大きな結果に結びついた。
 98年長野五輪後、スキー板の長さが身長プラス80センチから身長の146%の比例制に変更され、スキー板の長さが4センチも短くなった岡部は低迷。ムダな動きを極限まで減らし、より遠くに飛び出す技術を身につけ、06年トリノ五輪を前に復活。それでも当時は「まだ自信が持てなかった」という。その後、踏み切り時に高く飛び出す方法も模索し再び低迷期に陥った。しかし、今季はトリノ前のスタイルに戻して完成度を高め、国内で7勝を挙げてW杯組に復帰。銅メダルを獲得した世界選手権の団体戦で「いい(助走の)滑りが見つかった」という手応えも後押しした。
 19歳のシュリーレンツァウアー(オーストリア)らが席巻するW杯で、38歳には高いモチベーションもある。昨年6月19日に第1子となる長男・凛太郎ちゃんが誕生。「ジャンプやってることが、分かってくれるようになるかもしれない」と期待をかけるのは、来年2月の4度目の五輪。バンクーバーで父の威厳を見せる準備がようやく整ってきた。

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2009年3月12日のニュース