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名古屋は神戸との「上位対決」で2ー2のドロー 勝ち点1を分け合うも、両チームの表情には明暗

[ 2021年10月24日 20:21 ]

明治安田生命J1第33節   名古屋2ー2神戸 ( 2021年10月24日    豊田ス )

名古屋・フィッカデンティ監督
Photo By スポニチ

 来季ACL出場権を争う3位・神戸と、勝ち点3差で追う5位・名古屋の一戦。見応えのある90分間だったのは間違いない。ただ同じ勝ち点1を分け合う結末でも、その表情は明暗を分けた。神戸は三浦監督とFW武藤嘉紀が抱き合って笑み。名古屋MF前田直輝は口を真一文字に結び、悔しさをにじませた。

 前半45分間は名古屋のゲームだった。6分に先制点を挙げたMF前田直輝が「相手のDFラインがワンサイドに寄る傾向になるのは分かっていた」と話したように右サイドで組み立て、左サイドのMF相馬勇紀を生かす戦術がはまった。

 また神戸の三浦監督が「名古屋の中央守備は固いけど、我々もそこを狙いたい気持ち、また崩すアイデアがあった。でも引っかけられてカウンターをくらった」と振り返ったように、同14分のFWシュヴィルツォクの追加点はMF稲垣祥のパスカットが起点。同38分にも中央でのパスカットから高速カウンターで、MFシャビエルが決定機を迎えるなど奪ってからの速攻は効果的だった。前半を終えて2―0。今季リーグ最多19試合無失点の名古屋にとっては“安全圏”のリードだった。

 だが、このままいけば勝ち点で並ばれてしまう神戸はハーフタイムの修正する。後半開始からMFボージャンを2トップの一角で投入。三浦監督は「前線で張った位置から下がってボールを受けたり、また相手が食い付いてきたら背後を狙う動きに期待した」と説明し、またFWから中盤に下げた武藤には「相手は2列目からの飛び出しに付いてこられない」と指示を送った。中央を固められた名古屋守備陣に対しては「ボランチを走らせてサイドに引き出す。そうすれば中央が空いてくる」と真ん中を効果的に使うために、敢えてサイド攻撃を多用する方向に舵を切った。

 「次の1点が大事になるのは分かっていた」(名古屋MF前田)。「1点を取れば状況は変わると分かっていた」(神戸FW武藤)。お互いに狙いを定めていた“次の1点”は神戸に微笑んだ。後半14分、左CKをファーサイドのDFフェルマーレンがヘッドで折り返し、武藤が体ごと押し込んだ。「全くデザインされていない形のゴール」(武藤)で1点差に迫ったが、そのキッカケを作ったのはジャブを打ち続けたサイド攻撃と神出鬼没のボージャンの動きだった。

 一方、守勢に回っていた名古屋のマッシモ・フィッカデンティ監督も手をこまねいているわけではない。「イニエスタとボージャンに(DF陣と中盤の)ライン間のスペース突かれていた」。後半17分にDF森下龍矢を右ウイングバックで投入して、3バックに変更。中央をより堅固にすることでボージャンのスペースを消そうとした。そして守備の安定を取り戻しながら突き放すゴールを狙った。その中で迎えた同27分。MFマテウスのスルーパスに左ウイングバックのDF吉田が抜け出し、FW柿谷曜一朗にクロスが渡ったが、柿谷の決定的なシュートは神戸GK飯倉大樹に阻止された。そのこぼれ球に反応したMF稲垣のシュートも枠を捉えきれなかった。

 最大の決定機を逃した代償は大きかった。是が非でも追い付きたい神戸は同31分、「(三浦)監督が言っていた通りの展開だった」と武藤がマーカーの吉田を振り切りエリア内に侵入。後方から倒されVAR判定の結果、PKを獲得した。それを名手イニエスタがきっちりと左上に叩き込み試合は振り出しに。この試合だけでも4本の決定機をストップしていた名古屋GKランゲラックも止めようがなかった。

 そのまま“最後の1点”は両チームともに取り切れずタイムアップ。残り5試合で神戸との得失点差を考慮すれば、名古屋は勝ちたかった一戦だった。そして2点差を追い付き勝ち点差をキープできた神戸にとっては「間違いなく目標達成のためには大きい」引き分けだった。鮮明に浮かび上がるコントラスト。それでもフィッカデンティ監督がまず「一言で言えば良いゲームだった」と口にしたように、両チームの指揮官の戦術や戦略、選手の思惑が交錯した濃密な90分間だった。

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2021年10月24日のニュース