×

見えなかったWEリーグの新鮮さ

[ 2021年9月24日 16:20 ]

WEリーグ開幕戦・INAC神戸―大宮のピッチに入場する両チームイレブン (撮影・後藤 大輝)
Photo By スポニチ

 【大西純一の真相・深層】WEリーグが開幕した。なでしこリーグから、プロに移行したが、変化が見えないのが気がかりだ。

 9月12日のINAC神戸対大宮の試合前に行われた開幕セレモニーでは、TUBEの春畑道哉さんがWEリーグのテーマ曲を演奏し、参加チームのフラッグが並び、チェアが開会を宣言――何だか28年前に見たJリーグの開幕戦と同じようだった。試合後の取材対応でも監督や選手から「ついに始まった」「新しい時代が来た」という声は聞こえなかった。

 Jリーグは93年に、28年間続いた日本リーグから移行したが、開幕へ向けて大きく変えていった。理念を打ち出し、地域密着や「チーム名から企業名を外す」などのコンセプトを打ち出した。プロ野球の関係者からは「絶対に成功しない」といわれても、ひるむことなく突き進んだ。Vゴール方式や、2ステージ制、10チームのユニホームやグッズの製作を1社に任せて同じコンセプトにするなど、次々と仕掛けていった。細かいところでは、用語も「コミッショナー」ではなく「チェアマン」、「オープン戦」ではなく、「プレシーズンマッチ」、「フィールド」ではなく「ピッチ」などあえて意図的に野球とは変えていった。「歌舞伎は歌舞伎の舞台で」日本リーグからJリーグへ、リニューアルではなく、ゼロから新しいものをつくっていった。走りながら考え、やって駄目なら変えればいいという精神。川淵三郎チェアマンが自らスポークスマンとなり、積極的に取材を受けて、情報発信した。記者に囲まれれば、ネタになるようなことを話した。読売新聞社の渡辺恒雄社長と正面衝突したが、結果的には「あれでJリーグの理念をみんなに知ってもらえた」と川淵さんも言っていたほどだ。過去を捨ててまったく新しいものをつくったからこそ、成功し、日本に根付いたと思う。

 クラブもJリーグ開幕10チームに選ばれたことを誇りに思い、いかに選手を売り出すか、チームをアピールするかに力を注いだ。担当記者にネタを売り込み、紙面を奪って露出度を高めようと競った。試合で勝敗を競うだけでなく、広報担当も運営担当も監督や選手もみんなが競争し、言いクラブにしようと競った。

 WEリーグはなでしこリーグとどう変わったのか。公益社団法人になり、組織的にはプロとなったが、どうも違いがはっきりとは見えてこない。選手の意識もまだまだで、むしろバスケットボールや卓球のほうが「何とかアピールしよう」という姿勢が見える。スター選手が出てくるのを待っているのではなく、リーグとして、もっと違いを出せるように仕掛けていかないと。コロナ禍で制限があるとはいえ、せっかく作った新リーグなのだから、もったいない気がする。

続きを表示

2021年9月24日のニュース