×

山梨学院 激闘PK戦制しV、GK熊倉また“神セーブ”「外してもいい、俺いるから」

[ 2021年1月12日 05:30 ]

第99回全国高校サッカー選手権大会決勝   山梨学院2ー2(PK4ー2)青森山田 ( 2021年1月11日    埼玉 )

<青森山田・山梨学院>PK戦に勝利し優勝を決めた山梨学院イレブンはGK熊倉と抱き合って喜ぶ
Photo By スポニチ

 決勝戦が行われ、山梨学院が青森山田にPK戦(4―2)の末に勝利し、11年ぶり2回目の優勝を飾った。延長戦まで戦ったが2―2で決着はつかずPK戦に突入。主将のGK熊倉匠(3年)が2人目をストップするなど準決勝に続いて“神セーブ”を披露した。第88回大会の初出場・初優勝の際にも青森山田を撃破しており、注目された“因縁の対決”は再び山梨学院に軍配が上がった。

 観客のいない会場に、ひときわ大きく選手たちの歓喜の声が響き渡った。雄叫びを上げた主将の熊倉のもとに選手たちが全力で走っていく。プロ内定者が一人もいない雑草軍団が、3年連続で決勝に駒を進めた青森山田をPK戦の末に撃破。11年ぶり2回目の頂点に駆け上がった。

 ここまで4戦15得点と圧倒的な攻撃力を誇る相手に延長戦も含めた110分間で熊倉が浴びたシュートは24本。2点を失いはしたが、前半6分に1対1のピンチをストップするなど、好きな選手に挙げるセリエA・ユベントスの元イタリア代表GKブフォンのように的確な判断力と素早い反応ではじき返し続けた。後半33分に2―2に追いつくと、延長戦も耐えて同点のまま今大会3度目のPK戦に突入した。

 「PKになって自分の日だと思った」。PK戦の2人目で対峙(たいじ)したのは、中学時代にFC東京U―15深川でチームメートだった青森山田のMF安斎だった。「PKに自信があったし、(PK戦に)なった瞬間に負けないと思った。安斎には負けたくないという気持ちでプレーしていた。最後の最後まで我慢して、体の向きをみて跳んだ」。完璧にコースを読み切り、左に横っ跳び。ドンピシャだった。帝京長岡(新潟)との準決勝に続く“神セーブ”でチームを頂点へとけん引した。

 PK戦の直前には主将としてチームメートを鼓舞した。「泣いても笑っても最後の試合だし楽しんで蹴ってこい。外してもいいぞ、俺がいるから」と声をかけて有言実行。中学時代の全日本ユース選手権の決勝の鳥栖U―15戦では自身のミスから追いつかれ、PK戦の末に準優勝に終わったが、高校生活の最後の大舞台で苦い記憶を払しょくしてみせた。

 卒業後は立正大に進学する。将来の夢はプロ選手で、今後のサッカー人生の目標には「日本代表になり、試合に出て活躍する」ことを掲げる。コロナ禍に翻ろうされ、苦しいことも多かった高校最終学年。主将として、守護神として、強い精神力でチームを引っ張り続けた先に、一生忘れられない特大のご褒美が待っていた。 

 ◆熊倉 匠(くまくら・たくみ)2002年(平14)7月30日生まれ、埼玉県出身の18歳。FC東京U―15深川を経て山梨学院に進学。鋭いシュートへの反応が武器。決勝で対戦した青森山田のMF安斎とは中学時代にチームメートだった。好きな選手はセリエA・ユベントスの元イタリア代表GKブフォン。家族は両親、姉、妹。1メートル81、75キロ。

 ▽私立山梨学院高校 1956年(昭31)創立。サッカー部は前田大然(横浜)や渡辺剛(FC東京)らを輩出。駅伝部や野球部も強い。主な卒業生はプロ野球ソフトバンクの明石健志、競泳女子シドニー五輪代表の萩原智子ら。所在地は甲府市。

 ≪3試合目のPK戦≫山梨学院が今大会3試合目のPK戦を制し11大会ぶり2度目の優勝。決勝でのPK戦決着は、第91回(12年度)以来8大会ぶり3度目。当時優勝した鵬翔(宮崎)は1回戦から決勝までの全6試合中、4試合がPK戦勝ち。山梨学院の3試合はこれに次いで多い。

 ≪6戦8点はV校最少≫山梨学院は決勝では2得点も大会通算は6試合で8得点。6試合を戦った優勝チームでは第87回(08年度)の広島皆実が記録した9得点を下回る史上最少得点王者。

続きを表示

この記事のフォト

2021年1月12日のニュース