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Jクラブの新たな苦境

[ 2020年7月31日 12:00 ]

 【大西純一の真相・深層】Jリーグのスタンドに観客が戻ってきた。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、上限5000人(または収容人数の50%以下の少ない方)という厳しい制限が付けられている。当初は7月いっぱいで制限がなくなる予定だったが、感染拡大が止まらない現状からJリーグは「8月いっぱいは従来通りの方針」と、制限を継続することを決めたばかりだ。

 それでもスタンドにサポーターがいると、リモートマッチとは全く違う雰囲気がある。声を出さずに拍手で応援する新スタイル。リモートマッチでも録音したサポーターの声援を場内で流しているが、ピンチもチャンスも同じトーンになるなど微妙な差があった。やはり生の感触は違う。

 だが、この制限付きの有観客開催は、クラブによってはリモートマッチ以上に負担になっているという。観客を入れて試合を開催すると、チケットを販売する経費や、当日の警備員、場内外の案内係の人件費などがかさむ。スタジアムの使用料も減額されないところもある。しかも、指針に従って前後左右を空けたりすると、定員1万5000人収容のスタジアムでも、3000人程度しか入らないところもあるという。ここに来ての新型コロナウイルスの感染拡大で観戦を自粛する人も増えた。長い梅雨で悪天候が続いたことも重なり、2000人前後しか観客が入っていない試合も多い。入場料収入はあるものの「これではリモートマッチ以上に大きな赤字」と頭を抱えるクラブ関係者もいるほどだ。

 それでも「お客さんがいた方がいい。緊張感が違うし雰囲気も違う」「お客さんを入れた最初の試合で、みんなうれしそうにしていたのを見ると」と、やりがいを前面に出し、納得する関係者もいる。しかし制限が延長されたことで、経営規模が小さいクラブはさらに厳しい状況に追い込まれているところもある。アウェー試合で前日から現地入りするスタッフの人数を減らすなど経費削減を始めているところもある。

 新型コロナウイルスの感染拡大が続くと制限がさらに延長される可能性もある。経営危機が現実になるクラブも出てくる可能性がある。この苦境をどうやって切り抜けるか、Jリーグが生き残るための正念場だろう。

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2020年7月31日のニュース