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エンポリの“半沢直樹”だ!元銀行マン指揮官が見せる鮮やか手腕

[ 2015年2月24日 08:35 ]

元銀行マンという異色の肩書きを持つエンポリのサッリ監督(AP)

 元銀行マン率いる地方クラブがセリエAで健闘中だ。今季7シーズンぶりにセリエA復帰を果たしたエンポリは22日、ホームでキエーボに3―0と快勝。降格圏の18位と勝ち点7差の14位につけている。銀行員からサッカー指導者に転身したマウリツィオ・サッリ監督(56)はチームに組織的戦術を落とし込み、限られた“資産”を有効運用。ビッグクラブとも再三引き分けるなど、自身セリエA初挑戦で鮮やかな手腕を見せている。

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 ACミランのインザーギ監督解任か、とイタリア紙が一斉に報じたのは15日のエンポリ戦後。1―1の引き分けだったが、内容ではエンポリが明らかに上回っていたからだ。DFラインが高い位置を保つコンパクトな陣形でペースを掌握。守備では23歳のDFマリオ・ルイが本田をマークして相手の起点を封じ、攻撃では元イタリア代表FWマッカローネが意図的に右サイドへ流れてミランの弱点を突いた。

 「完全に主導権を握っていた。ミランの方が少しおじけづいているように見えたね」。個々の能力では相手より劣る選手たちを束ね、意思統一された動きで対抗する戦い方こそサッリ監督の真骨頂だ。エンポリの今季年俸総額はセリエA最下位の1100万ユーロ(約14億8500万円)。1位ユベントスは1億1800万ユーロ(約159億3000万円)で、ミランの9400万ユーロ(約126億9000万円)があれば8チームつくれる。それでも今季はミランと2戦2分け。ローマ、インテル・ミラノ、ナポリからも勝ち点を奪い、ラツィオを破った。粘り強さが特徴で、12分けはリーグ最多。25得点27失点と“収支”も合格点だ。

 サッリ監督は元銀行員。大企業向け融資担当という“リアル半沢直樹”だった。しかし、父親が元自転車選手で、自身もアマチュアでDFとしてプレーしていただけにスポーツへの思いは断ち切れず、30歳から地元トスカーナ地方のアマチームで指導を開始。のめり込むうちに趣味ではなくなり、忙しくない職種への転属を願い出た。41歳で退社し、サンソビーノというチームをセリエCへ引き上げると、ペスカーラやペルージャなどで監督を歴任。12年に就任したセリエBのエンポリでは初年度に昇格プレーオフへ進出し、2季目で2位に入って7季ぶりにセリエAへ復帰させた。

 指揮官は「元銀行員」の肩書を嫌う。だが、厳しいノルマ消化を求められた経験が、戦う組織をつくり上げる手腕に生かされている。「毎日8時から夜10時まで働いて、組織を合理的に、制限時間の中でまとめる力がついた」。トスカーナ地方出身の若手を積極的に起用し、20歳のDFルガーニがイタリア代表に選出されるなど“部下育成”でも手腕を発揮している。22日にはルガーニのゴールなどで残留を争うキエーボに完勝。「我々のプレーの質はセリエAにふさわしいと思う。地方クラブのガイドラインをつくってみせようじゃないか」。貧乏な田舎チームとなめていると“倍返し”に遭うことは確実だ。

 ▽エンポリFC 1921年創設。86年にセリエA初昇格。90年代後半からセリエAとBを行き来し、04~05年シーズンにパルマの勝ち点剥奪により繰り上げでセリエB初優勝。最高成績は06~07年のセリエA7位で、翌シーズンにUEFA杯(現欧州リーグ)出場。育成に定評があり、モンテッラ(現ユベントス監督)、トニ(現ベローナ)、ディナターレ(現ウディネーゼ)、マルキジオ(現ユベントス)らを輩出。本拠はスタジオ・カルロ・カステラーニ(収容1万9847人)。

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2015年2月24日のニュース