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ゼーマン監督 超攻撃的戦術“ローマは0点にして成らず”

[ 2012年11月6日 06:00 ]

パレルモに快勝しラツィオとのローマ・ダービーに弾みをつけたローマのゼーマン監督

セリエA ローマ4-1パレルモ

(11月4日)
 ローマは4日、ホームで行われたパレルモ戦に4―1で快勝した。連敗で迎え、結果次第で解任の可能性が報じられていたズデネク・ゼーマン監督(65)だが、危機を乗り越えて次節11日にラツィオと戦うローマ・ダービーに弾み。失点覚悟の超攻撃サッカーでチーム改革に挑む異端児が、大一番を前に息を吹き返した。

 勝ち切った。前半31分までに2点をリード。それでも油断はできない。過去4敗で3敗までは逆転負け。しかも2敗は2―0から喫した。「問題はいいサッカーを90分間続けられないこと」と嘆いていたゼーマン監督だが、指揮官の進退が注目されたこの日は後半も2得点。ローマが勝った。

 「勝てば問題が解決したかのように言われてしまうんだよ」とポーカーフェースの監督が振り返った。浮き沈みが激しいチームだけに1試合の結果で一喜一憂はしない。

 得点はリーグ最多26を誇るが、失点も2位の20に達する。昨季はバルセロナ型のポゼッションサッカー導入を目指してボールを回したが、ゼーマン流は縦に素早く展開。最終ラインを高く保って前線からプレスを続けるが、攻撃一辺倒で息切れすると負けっぷりも豪快になる。1試合の得失点平均は4・18。守備的なセリエAにあってローマ戦は両軍合わせて4ゴールは観賞できる計算だ。

 摩擦を恐れない性格で98年にはセリエAの薬物乱用を告発しのちに審判操作が発覚するなど強い権力を誇っていたユベントスを名指しで批判。社会問題になったこの騒動を機に有力クラブから声が掛からなくなった。

 今夏13季ぶりにローマの監督に復帰すると「野心を持ったチームを率いる最後のチャンス」と訴えた。ウオーターバッグを担がせてのダッシュなど軍隊式トレーニングを36歳のFWトッティにも課すなど妥協はない。選手起用でも生え抜きで次期主将候補のMFデロッシを外すなど反発を恐れなかった。足踏みはあったが、97~99年の前回ゼーマン政権で才能を開花させ「彼について行くしかない。チームが監督の望むように機能していない」と支持を訴えていたトッティはこの日の勝利に「選手が最後まで集中力を切らさないことが大事」と手応えを口にした。

 「こういうサッカーを信じ続けてくれることを願いたいね」とゼーマン監督。乱打戦の向こうに理想のサッカーがある。

 ◆ズデネク・ゼーマン 1947年5月12日、チェコ・プラハ生まれの65歳。プロ選手は未経験も、アマクラブ指導を経て81年パレルモのユース監督就任。89年から率いたフォッジャをセリエA昇格に導いて注目され、ラツィオやローマなどを指揮。昨季はペスカーラでセリエBを制覇した。

 ▽ゼーマンの告発 ローマを率いていた98年8月に「選手が薬物に侵されている。ユベントスの選手は1年で体が大きくなる」とデルピエロらの疑惑に言及。イタリア・オリンピック委員会が調査も、検査結果が消えるなど証拠隠滅と思われる行為が発覚した。ユベントスの医師は1審有罪、2審無罪。最高裁は07年3月に対象の件は時効として裁判を打ち切った。

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